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2007年09月08日
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カテゴリ:ベートーヴェン
 九月というのは、なんとなく特別な響きがする月です。

 オフコースは「ああ、早く九月になれば…」と歌い、

 椎名林檎は「また九月が来たよ…」と歌いました。

 何かともの思う季節です。

 僕とっての九月は、「苦月」でしかありませんが。


 さて、人はいずれ死にます。

 何日か前、パバロッティ氏も亡くなりました。

 僕がもっとも敬愛する指揮者、

 カルロ・マリア・ジュリーニが鬼籍に入り、早や3年が経とうとしています。

 このCDは、彼が引退表明後、後進の指導のためにイタリアのユース・オーケストラを振ったときの

 貴重な記録です。

 コンサートのライヴ録音でもなく、

 総練習のセッション録音のようです。

 ラストには、身内だけの非常に親密な拍手が入っています。

 ジュリーニの呼吸がそのまま音楽になったような、

 なんの気負いもない音楽。

 なんの気負いもない田園。

 ベートーヴェンの第6番は、まさにこのように演奏されるべき音楽だったのだ、と思わざるを得ない録音です。

 オケのレベルは、確かに十分ではありません。

 でもこの音楽の充実振りはどうだろう。

 大地の営みに対するベートーヴェンの感動が、

 数百年前の一人の男の感情が、

 まるで今そこで起こったことかのように、そのまま私たちの心に入り込んで来るようです。

 そんな『田園』、これまで聞いたことがなかったです。

 この録音は、ジュリーニが20世紀最高のマエストロの一人であったことを示す貴重な記録となることでしょう。



 人はいずれ死ぬ。

 人は死から逃れることはできない。

 これはまぎれもない真実である。

 わたしたちは今日1日生きることによって、

 また1日、死に近づいている。

 しかしだからこそ、今日という日が輝くのではないのでしょうか。

 1999年2月13日、これがこの録音の日付です。

 ジュリーニ最期の指揮、最期の田園。

 絶筆です。





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Last updated  2007年09月09日 01時24分54秒
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