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テーマ:お勧めの本(7406)
カテゴリ:ブラームスの本棚
最近せっせと読んでいます。 目的は、現実逃避ですが。 でも10巻から読み始めたものだから、 10巻、11巻、12巻と進みながら 1巻、2巻、3巻・・・と同時並行で読み進めています。 奥さんは僕のそんな読み方に「よくそんな読み方できるのね」とあきれています。 この『北方・水滸』の面白さの秘密はふたつあります。 ひとつは、徹底したリアリズム。 梁山泊軍や禁軍や地方軍(とそれにからむ「政治」)の描き方など、 まるで現代の軍隊組織(とそれにからむ「政治」)のように精緻に描かれています。 青蓮寺や致死軍、飛流軍といった秘密警察やスパイ組織、ゲリラ部隊も登場します。 オリジナルでは妖術使いの公孫勝や高廉らも、スパイ部隊のボスとして力を発揮する、という設定です。 それと関連して、もうひとつは、この小説は中国の奇書「水滸伝」を題材にした北方謙三の全くの完全なる創作であるということです。 つまりもともとフィクションだったものをさらに嘘っぱちにフィクションにしたシロモノであるということ。 オリジナルでは108の好漢が梁山泊に集結するまでは 誰一人欠けることはないはずなのに、 次々と好漢たちが戦死していったり(呼延灼は、連環馬で少なくとも3人は殺した。)、 偶然的に出会うはずの同志たちが地下組織のように繋がっていたり、 本来地味な存在であるはずの櫨俊儀が最初から「塩の道」のキーパーソンになっていたり、 魯達→魯知深のはずが魯知深→魯達でしかも片腕をなくしてしまったり、 妖術使いもお呼びでないとばかりに、えぐいやり口のゲリラ組織や暗殺部隊、撹乱部隊などが活躍したり、 数え上げればきりのないほどの「そんな水滸伝はありえない!」の連続なのです。 だからこそ面白いというか、先が見えないからこそ逆説的に楽しめるというか。 そんな「水滸伝」です。 でもリアリズムを追求するがゆえの退屈な場面もたくさんあるのだけど。 文章は読みやすいです。 僕は北方ファンではないので彼の文体は詳しくありませんが。 よい意味でも、悪い意味でも、漫画みたいです。 とりあえずまあ、暇つぶしというか、現実逃避にはもってこいかな? でも僕はオリジナルの方を(未完の吉川英治版か、陳瞬臣あたりのやつ)を先に読まれておくことをお勧めします。 さんざんに文句を言いつつ、実はかなり『北方水滸』にはまってしまったブラームスです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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