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2007年11月11日
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カテゴリ:ブラームスの日々
 11月9日 午後7時開演。

 曲目は、

 リヒャルト・シュトラウス 交響詩『ドン・ファン』
               同 『死と変容』
  ヨハネス・ブラームス  交響曲第1番ハ短調

 ティーレマンの音楽作りは、遅めのテンポでじっくりと丁寧にスコアを浮き上がらせて原曲のもつ本来の旨味を聴衆とともに味わおうとしているかのように聴こえた。

 出だしの『ドン・ファン』からしてベルリン・フィルとも肩を並べる南独の雄・ミュンヘン・フィルの貫禄と迫力十分で、会場が一気に沸点寸前まで温まった。

 鳴り止まぬ拍手。次の曲へ行く前に、カーテンコールが3回繰り返された。

 2曲目の『死と変容』は、遅いテンポ設定の中での集中力の持続と決してだれない・乱れないリズム感は流石だった。

 フィナーレの「浄化」の部分は圧巻で、まるでフォーレのレクイエムのように息が長く、(たぶんカラヤン盤の3・4倍のテンポだったと思う)一音一音が極限まで引き伸ばされ、本当に天国にまで連れていかれてしまいそうな、魂が燃焼する演奏だった。

 休憩に入る前、隣に座っていた初老の男性が、「凄すぎるね。」と連れの方に興奮気味につぶやいておられたのが印象的だった。

 後半メインのブラームスは、一言で表現するなら『文学的』ブラームス。

 ゲーテの中編小説の中に多くの箴言がちりばめられているように、交響曲の一音一音が含蓄深く鳴り響いた。

 とりわけ、第一楽章の主部のリズム「ズンタタンタ、ズンタタンタ」の弦のはっきりとしたアクセントの付け方は、「この曲はこのようにして聞くものなのか」という新しい発見を与えてくれたし、終盤での弦のピッチカートの際立たせ方は、ややもすると「なよっと」して終わってしまうこの楽章を、中盤の雄渾さの余韻を十分に残したまま締めくくった効果は、一見目立たないけれども大変感動的だった。

 フィナーレでは、序章のアルペンホルンが(本場の響き!)勇壮に鳴り終わったあと、まるでフルトヴェングラーのような長い休符があった。

 僕は思わず目を閉じた。

 心地よい緊張感がただよったあと、静かに―本当に静かに、

 pppでゆっくりと、まるで何かを慈しむようにメインテーマが始まった。

 本当にそれは、まったく別の曲を聴いているように違う印象を与えたけれども、間違いなく、僕たちのよく知っている繊細極まりないブラームスその人の音楽であった。

 そこから終盤まで、じっくりと錬られ鍛えられた音楽は確実に盛り上がっていき、

 最後の最後までフル・オーケストラが溜め込んだエネルギーを

 今日一番のティンパニーの最強の連打のリズムが開放し、この大曲の大演奏を締めくくった。

 興奮した博多っ子の大拍手。

 アンコールは、贅沢にもワーグナーの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』。

 「おらがドイツ」とでも言わんばかりに豪壮かつ愉悦感あふれた、こなれた演奏だった。

 実は控えめで奥ゆかしい博多っ子は、スタンディング・オベイションこそ少なかったものの両手を頭上いっぱいに高く掲げて大きく拍手し、何度も何度も指揮者をステージに呼び戻して、はるかヨーロッパは南ドイツからはるばるやってきたティーレマンとミュンヘン・フィルの渾身の名演奏を称えた。


 僕の少ないコンサート経験でも、これは最高のもののひとつだった。

 こんなコンサートは、一生にそう何度も聴けるものではない。

 聴く前は少し高めに感じていたチケット代も、終了後は「これだけのものを聴かせてくれたのなら安いものだ」とさえ思った。



 実はこの日、本当は一人で行く予定だったのだけど、

 どうしても母を天神まで連れていかなくてはならない用事があって、その用事を済ませたあと、母に「今日コンサートがあるとばってんどげんね。めったに聴かれんばい。」と水を向けたところ、もともとクラシック音楽が好きな母は遠慮しながらも結構乗気だったので、チケットセンターに連れて行ったところまだ空席があったので、母と(ついでに)出張帰りの妻も誘って3人で聴きにいったものでした。

 コンサートまでのあいた時間は、眼鏡屋で遠近両用の眼鏡を作り、デパートで服を選びました。どこまでも遠慮がちな母です。お金は僕が出すよと言っているのに、眼鏡は「眼鏡市場」のセットものだったし、服はバーゲンものしか袖を通そうとしませんでした。

 チケット3人分は確かに財布にこたえたけれども、ずっと田舎暮らしの母をコンサートに連れて行く機会なんてそうそうないものだし、たまたまではあったけど親孝行の真似事みたいなことができてよかったな、と思っています。

 公演終了後、母にCDを買ってあげました。記念になるかもしれない、と思って。その日最後の買い物です。その夜と同じ指揮者、同じオーケストラ、同じ曲の、ティーレマンのブラームス第1番。 

 その日の母は、慣れない天神の街にすこし緊張していましたが、それなりに楽しんでくれたようでした。

 でも次は、もう少し恩着せがましくない親孝行がしたいな、と思います。

 「お金使わせるね」とつぶやく母は、とても小さく見えました。
 





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Last updated  2007年11月11日 16時42分00秒
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