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テーマ:今日聴いた音楽(75648)
カテゴリ:J.S.バッハ
毎朝、同じ時刻に、同じ柱に寄りかかり、蹲っている初老の男がいる。 彼を毎日眺める、 毎朝、同じ時刻に、同じ改札をくぐり、通過していく僕がいる。 彼が池袋駅のその柱から離れるのと、僕がその駅の改札を通らなくなるのと、 どちらが早いだろうか。 どちらが長くその場所に留まり、どちらが早くその場所を去るのだろうか。 深夜の池袋駅で、マタイ受難曲を聴いた。 構内のすべての建造物が、協会のように美しく思えた。 在り来たりの広告ポスターが、宗教画のように貴重な存在に見えた。 醜く疲弊した人々は、敬虔な巡礼者のようだった。 マタイ受難曲は、人間のあらゆる場面を包む力がある。 そっと寄り添ってきて、いつの間にか、それなしでは世界が成立しないかのような、 そんな存在感のある、不思議な音楽。 池袋駅でも、 マタイ受難曲は、 マタイ受難曲のままで、 整然と鳴り響く。 それが僕の小さなアイポッドの中に取り込まれた電子データだっとしても。 それを聴く者がどんなに卑小で低俗で無能な存在だったとしても。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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