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月夜に夢を  

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2008.08.13
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カテゴリ:Mother
夫は雫を入所施設から引き取って 四人で暮らしてもいい、と言う。
当然あたしは働けなくなって かなり貧乏な暮らしにはなるだろうけれど
それでも食べてはいけるはずだから、と。

彼は とても優しいひとで
その申し出が嘘だとは思わないし ありがたいことなのだろう。

でも きっとそれは無理だ。
わかっていないのだ。彼女と日常を共にするということの 本当の意味が。


夏期帰省に合わせて 雫の歯医者の予約を入れた昨日。
あたしは仕事だったから 大丈夫だという夫に初めてひとりで通院をまかせてみた。
残業必須の関与先から直帰になると あたしの帰りが遅いことについても
彼は 全然問題ない 適当に食べさせてるから、と言う。

この先ずっと あたしが常に雫係でいられるとは限らない。
彼女の父親となったからには 
一緒に暮らさないまでも 彼に引き受けてもらわねばならない場面も出てくる。
そう考えて 試すようなところもあった。


雫の好きなものを帰り道に調達して 家に帰ると 案の定8時をまわってしまっていて
リビングでは 疲れきった顔をして放心状態の夫が だらんと椅子に座っている。
話す声も力がない。伝達事項があるようなのだが 聞き取れない。
雫はといえば リビング一面におもちゃを広げ 
切除した歯茎から流れる血の色をしたよだれを垂れ流している。
発作があったわけでもないらしい。

時を同じくして リンも帰宅。
彼をひと目見るなり 燃え尽きて灰になってるね、と笑う。


だから無理だといったでしょう。

半日ですら そんな廃人のようになってしまうのに 
エンドレスで続く日常を乗り切っていけるとは思えない。
仕事に逃げていくようになるのは わかりきっている。


言語というものに反応せず理屈のとおらない雫と 長い時間ふたりきりでいるということが 
どんなに煮詰まることなのか。少しは 感じてもらえたろうか。
通院は やっぱりふたりで行きたいね、とつぶやいていた。

今さっき片付けたばかりのトランプを よりによってまたすぐひっくり返すか、と
ひどくイライラしながら嘆く彼が 
泣きながら 怒りながら おもちゃを片付けてきた小さい頃のリンの姿に重なる。

あたしとリンは 顔を見合わせて もう一度小さく笑った。
嬉しくないはずはない。





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Last updated  2008.08.17 11:36:59
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