|
カテゴリ:ビジネス書
よく、「頭に汗をかけ」なんて、言われます。しかし、どのようにして、汗をかけばいいのか分かりませんよね。この本がその答えを出しているように思えます。
小さな文字で改行少なめ、かつ、注釈、エピソード満載なこの本は、本好きにはたまらない一冊でしょう。しかも、緻密に内容が練られていて、頭の中をほぐすにはとてもいいですね。 前半は、ユダヤの歴史、ユダヤ人の定義、日本で流布しているユダヤ人に対する誤解を解く作業に割り当てています。後半は、その『ユダヤ人の頭のなか』を緻密に描いています。ユダヤ教の経典であるタルムードのように、複数の視点から炙り出しています。 その『ユダヤ人の頭のなか』の基本は次の4つことから構成されています。 1.実践脳力 →環境変化に対して、実用主義と適応力があること 2.無制限思考脳力 →独立独歩で思考する脳力を鍛えること 3.頭脳フリーク →読解力、分析的思考を鍛え学習する癖をつける 4.頭脳に国境なし →自分の文化を維持しながら世界に飛び込む 5.心は頭脳の一部 →個人及びコミュニティーレベル両方で他人を思いやる 更に、一つの項目は、複数の要素から成り立っています。すべてを紹介できないので、今回は、「実践脳力」の一部について、説明します。 実践脳力は、次の4つから成り立っています。 1.チャンスをつかめ 2.損切りせよ 3.知らないことは何かを知れ 4.情報伝達は明快に 「1.チャンスをつかめ」は、外部の変化やそれに付随して自分の周りの変化からチャンスを見出します。弁護士である著者の例では、花形であるIPO、M&Aからはずされて、特許の仕事をするようになります。すると、ある時期から、会社方と特許法の両方に精通している人がいないことがわかり、有利な立場になっていることに気がつきます。今まで、花形の部門であるIPOやM&Aの部門の人は、景気が後退すると、途端に、職にあぶれてしまいました。 この節で登場する投資家ジョージ・ソロスの投資の戦略も紹介します。ソロスが取った戦略は、「投資が一番、調査は二番」というものです。自分が魅力的なアイディアと思う投資先は、結局は、みなが魅力的と思う投資先です。なので、値があがらないうちに真っ先に投資します。そして、じっくりと調査を行い投資先に不備が見つかるとすぐに流動化します。そのタイミングが最後でない限り、損は限定的なものになります。 ジョージ・ソロスの頭のよさに私は感心しました。 「2.損切りせよ」とは、二つの意味があります。 A.事前にリスクを最小限にする B.実際に、時間・金を失い始めた時点で自分の行動を変える Aの事前に、リスクを最初現にするには、他人の資本を使うとか、技術開発で複数の会社、チームを競わせて、リスクを最小にする方法が紹介されていました。 Bについて、インテルがメモリ事業からCPUの事業へ方向転換する際のエピソードか例示されていました。当時のインテルを考えると、ほとんどがメモリ事業から収益を上げていました。それを別のCEOが任命されたらという場合、どうするかという想像力を働かせました。 そして、ジョージ・ソロスは彼の著書『錬金術』で、リスクに関して、好きなユダヤの昔から伝わる言葉をあげています。 「逃げて生き延びる者には、まだ、戦うチャンスがやってくる」 しぶといですよね。多くの迫害を受けたユダヤの歴史を感じさせます。 この『ユダヤ人の頭のなか』を読んでいると、著者であるティム・テンプルトン氏が楽しそうに知的なパズルに取り組んでいる様子が思い浮かびます。いかにもユダヤ人らしいというのが読後の感想です。 ■■ 今日のエッセンス ■■ ■■ 外部の変化やそれに付随して自分の周りの変化にチャンスがある。 ■■ 逃げて生き延びる者には、まだ、戦うチャンスがやってくる。 ◆ユダヤ人の頭のなか 著者:アンドリュー・J.サター 出版社:インデックス・コミュニケーションズ、ISBN:475730241X 後悔度:★★★★★ ★★★★★:読まないと絶対後悔する、★★★★:読まないと、とても後悔する、★★★:読まないと、やっぱり後悔する、★★:読まないと、後悔する気がする、★:読まないと、後悔するかな? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ビジネス書] カテゴリの最新記事
|
|