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カテゴリ:人生観
ようこそ、お越し下さました。 ここ数カ月、本を読み漁っています。 読んだ本の殆どが、 市井(しせい)の人達の 「生きる」という事をテーマにした本でした。 特に、江戸時代の生活は、 今の私達が忘れ去られてしまった 大切なことを思い出させてくれます。 江戸庶民のことを書かせたら、 一目を置きたい直木賞作家、 「山本一力」 をあげるでしょう。 読み終えた彼の本は、 この2か月位で10冊は超えました。 中でも、ぜひここに紹介したい本があります。 それは、「菜種晴れ」です。 房州(千葉県南部)勝山の菜種農家に生まれた 主人公の「二三(ふみ)」が、 五歳の時に愛する家族のもとを離れ、 江戸深川の油問屋に養女にやられるところから始まります。 両親や兄姉の切々とした思いで満たされ、 また、愛する家族のもとを離れなければならない 別離の悲しみの中の「二三」の健気さが、 一面に広がる黄緑色の菜種畑の風景の中で克明に描かれ、 その姿が深く胸を打ちます。 母親にもきちんとしつけられて 無邪気で利発な少女として育った主人公が、 大人の思惑で、別離の悲しみと不安で小さな胸をいっぱいにし、 それまでとは全く異なる江戸深川の油問屋に養女として旅立ち、 その運命の中を健気に生きていこうとします。 だが、十五歳になった時、 江戸深川一帯の大火事で養父母を失い、 彼女の油問屋が大火事被害の拡大を招いた ということで油問屋の店も取り潰される。 そして、若干十五歳ではあるが、 彼女は店の蓄えの一切を使って 奉公人と火事で焼け出された人たちの救済をし、 自らは小さな木賃宿で暮らし始めます。 その後、めげずに故郷の母親を呼んで深川で天ぷら屋を始めます。 母親も喜び、天ぷら屋も軌道に乗り始め、許嫁もできた。 しかし、再び不運が彼女を襲う。 留守中に大地震(安政の大地震-1855年)で 母親も許嫁も天ぷら屋も失ってしまう。 高みを観続けることも大切なことだけど、 市井の中に高みの入り口が潜んでいます。 それを、もう一度見つめなおすと、 そこには見落としていた、 何か光り輝く宝石を 発見できると思います。 この本は、震災で多くのものを 無くされた方には、 特にお薦めかな。 「菜種晴れ」は、 一貫した心の描写が美しく、 泣けて泣けて・・・・・。 とにかく、珠玉の逸品です。 旅の途中に寄り道した、福島県会津の大内宿 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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