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先日、私のこのページを読んでいる奇特な女性と話していた時のことです。
その女性が、このページにかつて登場した、私のクライアントの「佐々木さん」が気になるというのです。 実は、その他の女性からも「佐々木さんは元気?」とか「佐々木さんって、いい人っぽいね」という言葉を頂きます。 私に対して「元気?」とか「いい人ね」とか「好き」とか言わないのが気に入りません。 私のクライアントである佐々木さんの登場するエピソードで、一番好評だったのは、『ついに、催促の電話』というタイトルの一文だったようです。 読んでいない人で、読みたいという酔狂な方はどうぞ。 (たぶん前回の方が面白い・・・^^;) 『ついに、督促の電話』 ↓ http://plaza.rakuten.co.jp/uematsu/diary/200411190000/ それにしても、人間関係はもろい。 とくに、仕事の依頼人であるクライアントの佐々木さんと、私の人間関係はもろい。 ささいなことで関係は悪化します。 ただ「時間が経った」というだけで、険悪になるのです。 依頼された書類を提出する期限になると、佐々木さんから電話が掛かってきます。 「もしもし、佐々木ですが」 「セールスならお断りします」 「セールスじゃありません。佐々木です」 「あっ、それなら、ただいま留守にしております」 「ふざけないで下さいよ!電話したのは、お分かりかと思いますが・・・」 「どうしたんですか?声が変ですよ」 「えっ?そうですか?いつもと変わりませんけど」 「気をつけた方がいいですよ。 私に催促の電話を掛けてきた人で、喉頭ガンで死んだ人がいます。 その人も、いつもと変わりない、と言っていました。 それじゃ、お大事に」 「ちょっと待って下さい。 あの・・・催促するわけじゃないんですが・・・」 「よかった。 てっきり催促の電話かと思いましたよ。 催促は善良な人間のすることじゃないですからね」 「はっきり言うと、催促です」 「えっ?催促なら催促と、ハッキリ言って下さいよ。 こんなことで時間を無駄にする余裕なんかないんです。 じゃあ、失礼します。 お大事に」 「依頼した書類はどうなっているんですか?」 「どうなっているかと言われてもねぇ。 実在しないものについて、『どうなっているか』と訊かれても、答えようがありません。 火星人の病状が今どうなっているか、と訊かれるのと同じです」 「ということは、まだ出来ていないということなんですか?」 「あらゆる証拠から推理して、十中八九、出来ていないと推定できます」 「他人事みたいに言わないで下さいよ。 困りましたねぇ」 「そうですか。実は私も困っているんです。 まさに以心伝心、同病相憐れむ、ですね」 「以心伝心でも、同病でもないでしょう! 仕事する気はあるんですか?」 「もちろんです。片時も忘れず、鋭意取り組んでいるんです。 睡眠中も、食事中も、散歩中も、ジムに行って泳いでる時だって、忘れたことはありません」 「お願いですから、真剣に考えて下さいよ」 「もちろん真剣です。 毎朝起きると、催促の電話が来ませんようにと神様に祈る毎日です」 「それほどまで考えるなら、仕事をした方が簡単でしょう」 「まったくその通りです。 ですが、私は困難な道を選ぶ男です」 「困難な道を選んでいるようには見えませんよ。 とにかく、困難でも簡単でもいいから、仕事をして下さいよ」 「そんなにムキになっていると早死にしますよ。 私の知り合いでムキになりすぎて、喉頭ガンで死んだ男がいます」 「そうならないために、書類をお願いします」 「やっぱり、声が変ですよ。 催促のしすぎなんじゃないんですか? 催促して楽しいんですか?」 「楽しいわけじゃありませんよ」 「それなら、催促しないでテレビでも見ませんか? 人生、楽しく過ごした方がいいですよ」 「でも、仕事ですから」 「仕事なら、何をしてもいいんですか? もし泥棒が仕事なら、泥棒してもいいんですか?」 「仕事の催促は泥棒とは違います。 催促しないと上司に叱られるんです」 「いっそのこと、一緒に逃げませんか? そうすれば、誰も叱られないですむ」 「お断りします。 それより依頼した書類は、いつ頂けますか?」 「死に物狂いで仕上げて、夕方までにはメールします。 本当に死ぬかもしれませんが」 「死にませんよ。 とにかく、夕方には送って下さいよ」 「念のために確認したいんですが、『夕方まで』には、明日の夕方も含まれますか?」 「含まれるわけないでしょう! 分かりきったことを言わないで下さいよ」 「念のために確認しただけです。 万一ということがあるかもしれないと思って。 ということは、明後日の夕方も含まれないんでしょうね」 「当然でしょう。 約束の期日は今日なんですから、今日の夕方です」 「そういう融通のきかないことでは早死にしますよ。 私の知り合いで、融通がきかないのがもとで・・・」 「喉頭ガンになったんですか?」 「私のクライアントになった男がいます」 ≪注≫ 私の周囲で、佐々木さんという実在の人物をご存知の方もいらっしゃると思いますが、ここではっきり申し上げておきます。 この文章はフィクションであり、この文中における個人名は、実在の人物とは無関係ではありません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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