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カテゴリ:小説:奈良白日夢奇譚‐耳視師・月櫻
「ぎりぎりになったな」
月櫻の古い友人と合流しちょっとした渋滞に巻き込まれて到着したのは、 薬師寺の駐車場係りが片付けを始めるようなそんな時間だった。 古い友人と一言に言うが、どれだけ古いかと言うと… 3000年位かな←。 月櫻は風(竜)仙だった過去生を持っているが、彼女はその当時花仙であり、月櫻とは仙人仲間であった。 柔らかなピンクの大輪の芍薬。 それが彼女だった。 月櫻は過去生を思い出すのが余り得意ではないが、 彼女はいつも遠くを眺めているような目をして、 「何処にも行けないから…」とさびしく笑っていた。 香りと共に、花弁と共に参ろうぞ。 そう言って風に乗せた。 本体はその地にあるが、 貴女の心は何処にでも飛んで行ける。 何処の景色も視る事が出来るだ。 芯の強い美しい花仙だった。 その当時の名を取って、彼女の事を麗珊(リーシャン)と呼ぼう。 奈良見物をしたいと言う彼女に、せっかくだから連休を利用して遠くに行こうかと提案し天河村へ行く事になっていた。 遠方から来てくれた友と今回は昔の様に旅立とう、 そんな気で予定を組んだのが始まりだった。 しかし例の夢の一件と年に一度の御開帳と重なるとなれば…。 きっと何かあるのだろう。 そして村に向かう前日に『薬師寺に行け』と守護から言われたのだ。 何があるかいつも言わないのが困りものだが『加護を頂く』という事とか色々あるようだ。 閉門まで時間は無い物の薬師寺に入る前に露払いとして 休ヶ岡八幡宮に参る。 ここで参拝の挨拶をすると、ざっと浄化してくれる。 上手いシステムだ。 浄化後に初めてそこの神社のおみくじが「花みくじ」である事に気がついた。薬師寺には何度も来ているが、これに気がついたのは始めてであった。 内容は… ばっちりな接待御籤であった。とだけ言っておこう。 薬師寺の南門をくぐる。 その途端、 「これもまた目的の一つか…」 と月櫻はつぶやいた。 薬師寺の南門をくぐってすぐに足を運んだのは金堂ではなく、 横にある東塔であった。 東塔は三重の塔が六重の塔に見える特異な形をしており「凍れる音楽」という愛称で国内外でも愛でられている。 東塔の先にある相輪の頂上に付けられた水煙は4枚からなり、その中には24体の飛天が透かし彫りにされている。 ふと、奈良は24に縁がある都だな…と月櫻は思った。 言霊では24は「女性」「智恵」などの性を持っている。 奈良に縁の非常にある女性の一人が『持統天皇』である。 父は天智天皇。夫は天武天皇。 第41代天皇。実際に治世を遂行した女帝である。 他に正倉院で有名な光明皇后といい、奈良には歴史的にも有名な女性が多い。 ちなみに奈良市の重要なメインストリートは国道24号線と来ていれば、 はいはい、女性性に関わりの深い場所なんですね…と思ってしまう。 しかしそれだけではない。 持統天皇は又、稀代の術者でもあった。 都を守る為に容赦のない女帝であった。 この薬師寺を初めとして秋篠寺などを作り上げたが… いつもながらダイナミックな術式だ。 しかし 「…また出来ているか」空を見上げ月櫻はそうつぶやいた。 月櫻の目線は東塔の先の相輪に向けられていた。 言葉なきもの、世に存在せぬとされるものを “耳で視、目で聴く耳視師”月櫻には天に向かって刺す相輪の先にある物を見ていた。 それは、 見開かれた目玉。 つづく ********************************* 久々の更新です。 いや~、ここ一週間はリアル仕事持ち帰りの忙しさだったので流石に更新できませんでした。 今回は薬師寺~天河~下呂と一続きになっており、 今までとはちょっと毛色の違った白昼夢が多く…、 色々考えさせられる事が多々ありました。 けど、あくまで一個人の白昼夢(孟宗)を元にした「小説」ですので、 宜しくお願い致しますです。 ぼっちらぼっちらと更新していきますので宜しくお願い致しますですw にほんブログ村←押して頂ける心優しき方々募集中w。 更新しないからランキングは落ちてるんですが、見に来て下さる方は増えているみたいで、なんか嬉しいですw。 お休みしている間も押して下さったいた方々、本当にありがとうございました! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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