有為メモ。

在宅自営休職中。
今は療養がお仕事です。

言葉ひとつで印象なぞいくらでもどうとでもなるのだと感慨深くなる反面、そろそろこの図々しくも潔さの感じられない言い回しも止めたらどうなのかと思っている。

何処かの会社に在籍している身の上で会社に休職届けを出すなどして療養しているのであればそれは立派に『休職中』であるし世間的にも実際休職していると認められるが、在宅自営の人間が自分の請け負っている分野の仕事をほったらかしにしておいて家に引き篭もって寝込んでおれば、企業に属して休職の許しを得ている人とやっている事は同じでも届出する代物は何も無く『休職中です』と自己申告するしかない世界なので、事実上は単なる無職ヒキコモリである。
しかもそれで生活が切羽詰ったからといって自分の専門とはまったくかけ離れた業種の手伝いなどで小遣い稼ぎなんかをはじめた日にはすでに自営業でもなんでもない。ただのパート・アルバイトと呼ぶべきだ。いや、呼ばなくてもパート・アルバイトと化している。

・・・なんの事はない。現在の私の話だ。

頭の隅っこではその事実を認めているにも関わらず、なお体裁の悪さを気にして未練がましく肩書きに『在宅自営休職中』と書く。いい加減諦めが悪いというか見栄晴の悪あがきも甚だしい。


話は変わるが、こういう私にも職歴はある。

飲食業ばかりを狙って調理補助の仕事の経験を積んで調理師を目指してみたり、何故か興味もないのにコンピューター関係の会社に何年も勤めて無駄にHDDを1パーツも残らずバラす技術と品質管理技法を会得してみたり、その時の自己破壊的な衝動と金銭的危機感とで風俗勤務なぞしてみたり、登録制の派遣会社で肉体労働系アルバイトをして額に汗してみたり、「自宅でインターネットしてるんでタイピングできます」というプロの方が聞いたら怒りそうな動機で事務系の入力作業に従事したり、何故か趣味で開設したサイトで某経営者のおっさんに目をつけられてノリで注文をこなすうちにいつの間にか肩書きがWebクリエイターになっていたり。

他にもちまちまと細かい経歴はあるのだが、それらはこっそりと記憶から抹消したいような後ろ暗い事実も多いのでここには書かない。いっそ時効にしてしまおう。まあ、そんな話はどうでもいい。


様々な職業を体験してきてどの分野でもつくづく実感するのは、世の中は学歴だとか資格だとか技能だとか表面的には十人十色の意見があるけれど、結局どこの現場でも現実問題として最終的に問われるのは即戦力として必要なポジションへすぐに投入可能なレベルまで極められた実戦経験だとか、独特な感性によって研磨され尽くした厳しい観察眼だとか集中力だとか、それに対抗し得るところまで洗練された知識と柔軟な思考力だとか、そういった一朝一夕では手に入らない種類のものだよなぁ、という事だ。

職業に貴賎は無いとはいうが、職業に貴賎が無いのが真実であっても労働力というのは常にそういった基準で値踏みされて序列・順列をつけられている。逆につけられない方が怖い。

それが嫌というほど判ってからというもの、どの分野も齧る程度に経験と知識を身につけたはいいが己の適性すら定かでない素人玄人の半端者の私は、自分で自分自身に社会不適合者の烙印を押して余計に自分の才能や技能に疑いを持つ悪循環に陥っている。今の状態のままでどこの職場へ所属したとしてもどんな業種をはじめたとしても、いずれ自分の不適格さがじわじわと露出して周囲を取り囲み、仕事仲間の足を引っ張ったり私自身が足を取られて躓いたりして我が身が沈んでゆき、やがては自信の欠片すら失って立ち上がれなくなるような。そんな不安に駆られるのである。

「それが社会適応不安というビョーキなんです」と言われてしまえばそれまでなのだが、これはどうも今の今まで自分の持って生まれた順応性に胡坐をかいて適当に成り行きに乗っかってホイホイと浮気に色々な事柄に手を出してきたはいいが、人生において一度も一点集中して真面目に物事を追求するような行為をしようとしてこなかったしわ寄せなのではないだろうかと思えて仕方がない。

今のままでは器用は器用でも器用貧乏もいいところだ。


幸い労働は嫌いではない。どちらかというと勉強も好きな方だ。
これから何かをはじめるという手も無い事は無い。

そもそもが興味を四方八方に散らす性質の私であるのでまず自分の適性などというもの自体があるのかどうか定かでない上に、己のそれを探し出したところで一生暮らすに困らないほどの実力へと磨きをかけるのに一体どれだけの時間を要するのか、何かがモノになるまでまともに辛抱強くその場に座していられるのか、道程にまったく想像も見当もつかないが。

とりあえず、『在宅自営休職中』の看板を下ろして『無職勉強中』あたりに掛け替えるくらいから、はじめてみてもいいのではないかと思いはじめている。