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カテゴリ:呟き
現在、逃げている。 今行っているこれは難解な懸案事項を一番建設的に整理していく方法なのだともっともらしく嘯きながら、そこから目を逸らす為の作業を散々に繰り返して。幾重にも苦しく重複した未解決問題のすべてから力の限りに逃走している。 もしも私の古い過去を知る人が、今の私のいかにも弱い有様を見たならば。百発百中で、昔のどんな痛みも知らぬ気な強い矜持の持ち主だったお前は一体どうしたと不気味なものでも見るような眼を向けて戸惑いながら訊くだろう。 私は昔から何処の馬の骨とも知れぬ只の小娘で、矮小で脆弱で愚劣で阿呆な只の人間だったのに、その自覚が抜け落ちるほど頭が無かったからね。 あんなに何度も分厚い壁に突き当たってあんなに何度も深い淵の底へ堕ちてあんなに何度も崖の上から転落してもなお血と泥に塗れながら何度でも立ち上がる折れない不屈の精神と、誰にも染まらぬ孤高さと、女のクセに弁慶みたいなヒトのクセに機械みたいな些か状況に反して真っ直ぐ過ぎる自分自身の人間味の無さが我ながら気持ちが悪くて道の途中に棄ててきた。 私に必要だったのは、常に傲然と顔を上げて仁王立ちしていられる厳然たる強靭さよりも、心身が疲れたらそれを疲労だと感じる痛覚と、自分の力量の限界をそれと判断し得る賢さと、壁に背をもたれ地に竦み込む自分の姿を潔しとする情けなさと、すべての人の願望を叶えようという努力をしない冷たさと、それらの怠惰を自分で肯定するほんの少しの甘えだった。 それを学習した今では、敗走が如何に必要なものか知ってしまっているからいくらでも乞われた役どころから尻尾を巻いて逃げていくし、"倒れない"なんて強さに拘った生き様はもう要らないからとうの昔に何処かに捨ててきてしまったよ。 もし、いまだ昔の私に憧れていて、別人のように変わった現在の私に失望したというなら捨てていって。私はもう誰に命令されても聖母にも天使にもなれない。なりたくもない。神格化される為の矜持なんてとうの昔に手を離れた。 あれが欲しかったのなら貴方にあげる。私が歩いてきた足跡を辿っていけばまだ落ちている可能性もあるかもね。ただ、あれを使うならひとつだけ忠告。 『生きるか死ぬか悩みはじめる前に放棄して。』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年07月02日 02時05分18秒
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