[第11サイクル][第1ステージ] ホロゴンに出会って一番幸せだったこと
写真を始めた方の相当数は、絵を描きたいけど、そんな才能はないので、その代わりに、写真でもしようか、という人のようです。だからでしょうか、写真は絵に劣るという根強い常識がまかり通っているようです。でも、その根拠は、絵の方が難しいとか、絵の方が時間と労力を要するという、いわばプロセスの難易度にあるようです。それでは、水彩画は油絵よりも劣るのでしょうか?油絵は壁画よりも劣るのでしょうか?はたまた、絵画は石に刻む彫刻よりも劣るというのでしょうか?写真と絵画とを同一線上に置いて比較すること自体、相当に無理があるのではないでしょうか?私がホロゴンと出会って一番幸せだったこと、それは、写真を撮るという行為が、絵画を描くという行為とはなんの関係もない、まったく別個独立の喜びであることを、ホロゴンが教えてくれたことにあります。写真を撮るということ、写真を撮る行為によってしようとしていること、それは、自分の眼で見ていた世界を、まったく別の眼で見直すということなのです。つまり、まったく新しいものの見方を学び直すということなのです。こんな風に考えると、写真は絵画に劣る、いわば第2芸術ではなく、19世紀に出現し20世紀に成長した、新しい知覚であり、独自の世界認識の手段なのだと考えるべきなのです。第2の眼、それがレンズなのではないでしょうか?