カネモウカル薬とカネノウナル薬
江戸後期、脇坂義堂の「カネモウカルの伝授」を見てなるほどと感じました。「カネモウカル薬」と「カネノウナル薬」がある。どちらを選ぶか。もちろん「カネモウカル薬」と思うはずですが、実際「カネモウカル薬」は、はじめスゴイ人気なのにリピーターがすごく少ないのだそうです。逆に「カネノウナル薬」は飲めば難儀する毒薬なので誰も服用するはずないはずなのに、日に日に客が増え行列ができるそう。「カネモウカル薬」とは倹約、忍耐、勤勉、正直、知足、誠実の六味を調合しさらに柔和、謙虚、勇気、決断の四味を加えて煎じ、香りづけに慈悲の一滴を加えてある。飲むと口が曲がるほど苦いらしい。しかし飲み続けると気にならなくなり、万病を治す妙薬で特に金欠病には効能がある。「カネノウナル薬」は美食、奢侈、賭事、虚栄、威張り、嘘、諂い、怠けの九味に無気力、無分別、無節操、無精の四味を加えてある。ゆえに、飲むほどにクセになる麻薬である。自分がどんな薬を服用しているかを知りたければゴミ箱を見ればいいらしい。「カネノウナル薬」を服用している人は、書き損じた伝票、メモがわりに使った名刺などが入っている。「カネモウカル薬」を服用している人のゴミ箱には金を出して買ったものは入っていない。