楽しい未来のために

うちのパパは、エンジンがついている速くてカッコいいものが
大好きだった。
私も小さいころからそうだった。
スーパーカーに憧れた子供時代。
学校帰りに毎日バイク屋に立ち寄っていた高校時代。

そしてその夫婦の血を受け継いでいる２人の子供たちも
カッコいい車やバイクが大好き。

映画やＣＭ、ドラマに出てくるバイクや車に興味津津。
最近では、瑛太くんがでていた映画ワイルドｾﾌﾞﾝのバイクに
魅了され、中居くん、くさなぎくんのスカルプＤのＣＭの
スポーツカーは何だと騒いだな～（笑）

殿がついにバイクの免許を取りたいと言い出した。
まだ取れる年齢ではないが
原付が取れるようになったら取って
中免も取りたいそうだ。


パパはバイク事故で死んだ。
だから、本当は反対だ。
殿も死んじゃうんじゃないかととても怖い。

でも、免許取るのを反対して
無免でこっそり交通法規も分からず乗ったりする方が怖い。

ここいらの何処の高校も在学中の
バイクの免許取得を許してはいない。
なので、今すぐということではないが
そういう日がやってくるのだということを
覚悟して殿とじっくり話しておかなければいけない。

私がバイクの免許を取りたかったのに両親に大反対されて
取らなかったのを殿は知っている。
その理由をあらためて昨日聞かれた。
私の性格なら、誰に反対されて止められても
絶対に諦めないと思うからどうして？と。

理由はたった１つ。
悲しませたくないから。


母の知り合いのお嬢さんが彼のバイクの後ろに乗っていて
事故にあい、植物状態になってしまった。
だから絶対にダメだと言われた。

母を説得出来なければ免許は取れないと
何年もかけて母を説得しようとしたがダメだった。

そして母は、殿が免許を取りたいと言ってる事を知り
猛反対し、私に絶対に辞めさせるように言った。

でもね、私は反対はしないよ。
こんな日が来て欲しくないと随分前は思っていた。
バイクの免許取りたいと言い出したら
どうやって諦めさせようかと考えていた。

でも、今は怖い気持ちと裏腹に
パパの大好きだったバイクに乗りたいと言い出した事
本当は嬉しい。

パパが歴代のっていたバイクやアメ車の写真を
見せてやるとすごく嬉しそうにしてた。
パパのライダースーツ、ブーツ、
シンプソンのメット（ドラマで小栗旬がシンプソンのメットだったので
ビックリしました。当時珍しくてカラーリングもじぶんでして
パパの自慢のメットだったけど今はそう珍しくもないのかな～。
それともあの役にあのメット合わせたのかもしれないな。）をみて
かなりテンションがあがった殿。
ＤＮＡなんだね。

殿もバカじゃないから、パパがバイク事故で死んだことは
分かってるし危険な事も重々分かってる。
それでも乗りたい気持ちの方が勝ってるのだから
仕方ないんじゃないかと思う。

パパのお店でアルバイトしていた男の子が
自分でバイク屋を始めた。
中学の近くで通学路にある。

殿が連れていけとうるさい。
殿の姿をみたらきっと驚くだろう。
毎日学校帰りに友達ひきつれてバイク屋に寄るだろう。

きっとパパもそういう姿を喜ぶことだろう。

大事な人を亡くした傷は、時間がたっても絶対に癒えないと
あの頃は思っていた。
でも、やっぱり時間の経過は私の気持ちを変化させていた事に
あらためて気がついた。

殿は、いつか乗るバイクを買うためにお小遣いを
貯めている。
いや、最初はバイクの為ではなかったが
なんとなくお年玉や余ったお金を貯金していた。
いつか欲しいものが出来た時の為にと・・・
私と同じだ（笑）

原付なら余裕で買える金額はもうたまっている。

実際に高校に行って車の免許が取れる年齢に
なったら今度は車の免許が欲しいと思うかもしれない。
まだ、先の話だけど 心が揺れたし焦ったし考えた。

本当にその年齢が来るまでに危険な事も十分に教えて
バイクの話、車の話・・・同じものが好きな者同士
沢山話をしようと思った。