テーマ:最近観た映画。(40091)
カテゴリ:洋画 ドラマ
■原題 『Before sunset』
■監督 Richard Linklater ■脚本 Richard Linklater ■キャスト Jesse:Ethan Hawke Celine:Julie Delpy ■ストーリー :★★★★★ ■映像 :★★★★★ ■音楽 :★★★★★ ■総合評価 :★★★★★ ------------------------------- ■コメント■ ------------------------------- 早くも「My Best Movie of the Year」(←勝手に命名)に名乗りをあげた一作。 2005年3月。前作の「恋人までの距離(ディスタンス)」から9年。 「Before Sunset」は「恋人までの~」の続編で、その9年後のお話。 R.リンクレーターお得意のドキュメントに似た手法で製作されていて、 観客は前作同様、自分も主人公の二人の側に居て、二人の会話を聞きながら 二人の恋を見守るというポジションを感じさせてくれます。 前作の「Before Sunrise」は男と女が出会って翌朝の別れまでの14時間を描いた作品。 今作は9年後に再会し、また別れるまでの85分を丁寧に追っています。 このレビューを読む前に、前作(Before Sunrise)のレビューをどぞ! ------------------------------- ■ストーリー ■ ------------------------------- 作家になったジェシーはセリーヌとの恋を綴った新刊本のプロモーションのためにパリへ。 書店でインタビューを受けているところにセリーヌが現れ、息をのむジェシー。 二人は再会を喜び、ジェシーはセリーヌを散歩に誘う。 だがジェシーに残された時間はN.Y行きの飛行機が立つ85分だけ。 会えなかった時間を埋めるようにパリの街を歩きながらお互いのことを話しだす。 ジェシーは結婚し、子供もいる。 セリーヌには報道写真家の彼がいる。 それでも、いかにお互いを想っているか感じさせられる。 あの二人って結局どうなったんだろう? 観客が見ていて気になるのは、半年後の再会の約束がどうなったか?ということ。 どうやら、あの後は再会できなかったらしい。 なぜ再会できなかったのか? いきなりこの話を切り出すのはお互いためらわれる。 だって、自分ばっかり気にしているようで、なんかバツが悪いじゃない? 自分は本気だったのに、相手は本気でなかったら・・・。 おそるおそる切り出す二人。 ジェシーは半年後に借金をしてまで来たけれど、セリーヌはポーランドに 居るお祖母さんが亡くなり、葬式のために来られなかったらしい。 「どうしてあのとき、お互いの連絡先を聞いておかなかったんだろう」 「あのとき再会できていたら・・・」 と悔やんだり 「再会できても、すぐ別れたかもしれない」と気を取り直して言ってみたり。 「忘れられない人」に再会したら? 過ぎたことを悔やんだり、願望を会話に含めてみたり、でも昔のように 「途中下車して一緒に知らない街を周る」ほどの冒険もできない。 それでも相手の反応は気になって本音を引き出すように仕掛けてみたり。 時間は限られているわけで、単なる会話劇なのにものすごい緊張感。 二人の本音を探り合うような会話の緊張感は前作を上回るほどです。 そんな緊張感の中で爆発するのがセリーヌ。 「忘れられなかった」「会いたかった」 と素直に感情を表すジェシーに対し 「少年の心でパリに来るなんてずるい!」 とぶつける。 ジェシーには家族も子供もいるわけで、そんな相手とどうにかなれるわけでもなく。 後半、セリーヌを部屋に送るために乗り込んだ車の中で再度爆発。 「私と別れた男はみんな結婚した。どうして私にプロポーズしないの!?」 前作では強い女を自負していたセリーヌが、強い女でいることの弊害を爆発させる。 ジェシーがどうしたいのかがわからず、やきもきしているセリーヌが見ていて切ない・・・。 以下、ストーリーのネタバレ。見るには要反転。 二人は別れがたく、ジェシーはセリーヌの歌を聴きたいと、彼女の部屋へ。 一緒にいるのは楽しいけれど、ジェシーが発つ時間は刻々と迫っている。 セリーヌが踊りながら「そろそろ飛行機の時間ですよ~」とおどけて言っても ジェシーは黙って笑うだけ。 そして終了~。 え!?ここで終わりですか!? 本当に終わりですか!? どうやらイーサン、ジュリー、リンクレーター監督はさらに続編も考えているようです。 前作は「二人は会えたのだろうか?」という疑問を残して終えたけど 今回は「ジェシーは飛行機の時間に合わせて帰ったのだろうか?」 という疑問を残してくれました。 二人はそのまま別れたのか?それともセリーヌの部屋へ泊まったのか? 次回作(きっとあるはず!)への期待を残しつつのエンディングとなりました。 ------------------------------- ■ここが見どころ! ■ ------------------------------- スクリーンに映し出された二人。年をとってます(泣)。 イーサンは頬がこけていて、前作の「ちょっと小汚いけどナイーブそうな青年」が 年をとるとこうなるのね。 ジュリーも「あうっ。小皺が・・・」 こちらもイーサン同様、痩せましたね~。 (本編の中でも「前は太っていた」という台詞のやりとりがありました。) それでも後半にセリーヌの部屋で彼女が音楽に合わせて踊っている姿はとてもかわいらしい。 あれ?最初に見たときと印象がずいぶん違うぞ??? それを眺めているジェシーの表情もとても穏やか。 ストーリーが進むにつれて、顔がアップにされても気にならなくなってくる。 (うーむ。見慣れたのか!?) 徹底的に「時間の流れ」にこだわた作りが見所。 前作から9年の中で彼らの置かれている状況も変わるだろうし、考えていることも変わる。 前作の直後の再会を描くことなく、9年後にいきなり時間軸が飛ぶわけだから、 どうしても観客にわからせるため、冒頭で二人を通してお互いの現状を語らせる ストーリーテリングが必要となる。 これって大切なんだけど、どうしても「説明」っぽくなりがち。 だけど、パリの街をぶらぶら散歩しながらだと、久しぶりに再会した男女が お互いのことを話しているってな感じでとても自然なつくりになっています。 今回は二人の再会の時間である85分が現在進行形で進むようになっているため、 「っていうか、そういう話してないで、もっと核心に触れなよ~。 あと○分しかないよ!」 と、見ているこちらまで時間が気になってしまう 時間が進むにつれ、陽射しも変わっていくし、日も暮れていく。 タイムリミットは刻々と迫っている。 面白い! ストーリーの進行と時間の進行が同じってとても面白い! 撮影もとにかく大変だったそうです。 なんてったって、85分がリアルタイムに進行するため、日照時間との戦いになる。 陽の差し方、影の出来方がシーンごとに違うのは問題。 そこに矛盾が生じないようにと、ストーリー同様、時間との戦いだったそうな。 その努力は決して無駄ではなかったと思います! ------------------------------- ■ キャストについて ■ ------------------------------- 二人についてはもう特に言う事は無いでしょう。 イーサンもジュリーも前作以上に製作に入りこみ、1年近くリンクレーター監督と メールでやりとりし、映画について意見を交わしたそうです。 ジュリーが40ページ以上の台詞を書き上げ、それに肉付けしつつ、脚本が出来上がっていった そうな。 二人はその役を想定して意見を出しているので、会話やシチュエーションや 演技に無理がないのも、これで納得。 ------------------------------- ■ 音楽について ■ ------------------------------- 前作のエンディングで流れた曲がそのまま続編のオープニングに使われていて、 前作の印象深いシーンが流れる。 う~ん。にくい演出。 これだけでも前作からのファンは 「あ、別の作品ではなく『続編』として見ていいんだな。」 と嫌が応にも期待が高まる。 また、ジュリー・デルピーが映画の中で唄っているのも見どころ。 セリーヌの部屋にジェシーが来て、セリーヌが作った歌を聴くシーン。 ジェシーはセリーヌと過ごした9年前のことを自分の本に書いたけど、 セリーヌはセリーヌでジェシーを思って歌を作っていた。 不器用な唄い方なのだけど、そこが逆によかったりもします。 エンディングもジュリーが歌っている曲が流れています。 サントラ版は買ってはいないけど、映画の内容に沿ったゆっくり聴ける良質なトラック集に なっていることでしょう。 ------------------------------- ■ 英語の台詞 Check it out! ■ ------------------------------- あまりの会話の早さと多さに、リスニングがついていきませんでした・・・。 で、今回はタイトルについて。 前作(『恋人までの距離』原題:「Before Sunrise」)の邦題は、よく考えたなぁ と思いました。 原題のまま(「朝陽が上るまで」)でもわかりやすいんだけど、 「恋人になるまでの二人の距離」ってのもこの映画のテーマなのかな?と。 (単に、「恋人」という文字を使うとヒットするという定説もあるようですが。) 今回、いち早く「Before Sunset」の公開をアメリカのサイトで先に知ったあたくしは (タイトルどうするんだろう?)と半分ワクワク、半分心配・・・。 お願いだから「恋人までの距離2」なんてだっさいのはやめてくれ・・・(懇願)。 だったんだけれど、そのまんまのタイトルで落ち着いたようでよかったです。 続編があることを最初から知っていたら、前作もそのままのタイトルでも 良かったかもしれません。 ------------------------------- ■ 総評 ■ ------------------------------- この作品、米国の映画批評サイトでは大絶賛されたらしいんだけど、日本では評価が別れる のでは? なんてったって「起承転結」の「結」がはっきりしていないからなぁ。 彼らの映画の作り方からすれば、もちろんな結末なのだけれど、 この1作だけ見た人にとっては「なんて中途半端な映画!」と思うかもしれない。 でも、人生って必ずしも完璧な結末があるわけでもないわけで。 10年前の自分なら完璧な結末がないことが不満だったかもしれないけれど、 白黒つかないこともあるとわかるようになった今でこそ、受け入れられる結末だと思う。 ぜひ続編を!(でもできればまた9年後ではなく5年後くらいに。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 14, 2005 04:25:38 PM
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