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CUBASEという音楽作成ソフトウエアのコースに新年から行き始めた。基本原理はいろいろなチャンネルに、ピアノやドラムスなどの音源を貼り付けたキーボードで演奏した音を記録するというものだ。
教師は元ビオラなどを弾いていたクラッシック畑の元気なおばさんだ。 生徒は私を含めて、5人だけ。最近、音楽作成ソフトウエアにはまった感がある私には、この不人気さにはいささかびっくりした。 自己紹介の際に心理学者の渋いおっさんが「少年院で音楽作成を通じてポジティヴな矯正というものを行いたいのです」と長い指をくねくね絡ませて話していた。しかし、彼は休み時間の後には戻ってこなかった。コンピューターが苦手だと言っていたので、やはり苦手であると1時間半の授業で再確認したのだろう。金をドブに捨てるようなものではないか。 後はギリシャ系のアーティスト、トルコ系と思われる、あんちゃんっぽい性格をしたやつ、赤毛のパンクバンドに在籍していると言っているねえちゃんだ。 教師は最初は神経質な感じだったが、だんだん調子が出てきて、ジェスチャーが大きくなっていき、最後のほうは目をぎらぎらさせて「表現するのよっ!」なんて叫びだした。そして、生徒が自分で作成した曲を大音響で鳴らすことに決めたのである。 パンクバンドの女は、妙に保守的なジャズっぽいアレンジのロックンロールの曲を流し、トルコ系の男はかすかにレゲェと感じられるもったりした曲を発表した。 そして私の番だ。 70年代の前衛映画についているような、古ぼけたピアノの不協和音と哀しいバイオリンが絡む曲が流れ始めた。 私は「ああ、いや、その、私は音楽的素養はないのであって...」とぶつぶつ言い訳を始めた。 そして、突然これは私の曲ではなく、ギリシャ系のアーティストがつくった曲であることに気がついたのである。 きぃよーーーーん。ぽろーーーーーん...と流れる古臭い「前衛音楽」を聴きながら一人赤くなった。しかし、幸いなことに元気おばさん先生がしゃべりまくっていたので誰も気がつかなかったようである。 そして、私の曲が始まった。 むにょにょにょにょ、によ、によ、ぶんぶん。 明らかに調子がずれて、リズムの狂った音楽が大音響で部屋に響いた。 まったくギリシャ系の女の曲に似ていないではないか、私は何を考えていたのだろう。 あああ、死んでしまいたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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