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カテゴリ:本
大雨ってわけじゃないけど、そこそこ雨の日が続いたGW。
京極夏彦の「数えずの井戸」読んで自分の部屋で時を過ごした。 物語のベースは四谷怪談だけど、その上に全然別のストーリーを新たに構築する、 京極夏彦の創造力が凄い。 「序」の出だしを引用。 -------------------- 番町青山家屋敷跡通称皿屋敷に怪事が起きるという評判が巷を賑わし始めたのは、青山家当主青山播磨が惨死し、青山家が廃絶になった直後、秋風が肌に沁み入るようになった頃のことであった。 その怪しき噂は、語る者語られる者語られる場所に依ってまちまちで、一向に掴み処なく、またそれぞれが荒唐無稽なものでもあったので、事実として受け取る者こそ殆ど居なかったのだが、彼の屋敷は元より悪しき因縁が語り継がれる曰く付きの土地でもあり、また館自体住む者もなく荒れ始めていたことも手伝ってか、彼誰刻を過ぎてより、番町のその一画に寄り付く者の姿は絶えた。 -------------------- これはもちろん一通りの物語が終った後の話で、「序」の後の「昔数え」からが物語の始まりとなる形。 「序」の最後の一文は、 -------------------- こうして。 菊と播磨はおはなしになった。 -------------------- である。要するに、最初の最初からこの物語の悲劇的な結末を予測させるのである。まあ、ベースが四谷怪談だからそれ以外の有り様などないだろう。 「こうして。菊と播磨はおはなしになった。」って書かれているので、なんだか菊と播磨のラブストーリーみたいに思えてしまうが、そういうわけでもないのである。 確かに物語中に一ヶ所、二人だけで会話をする場面があって、その時の菊の言ったことは、青山播磨の心に少なからず安らぎを与えるのだけれども… それは俗に言う恋愛物語とは、また別のところにあって、菊と播磨は結ばれないどころか、結ばれることを想像すらせず、いくつもの予想外の出来事に振り回されながら、あまりに残酷な結末へと向かっていくのである。 結局のところ、菊は別嬪さんで心根の優しい子なのに、あまりにも非業な死を遂げる。 もちろん他の方々も皆たいへんな死に方をするし、青山播磨だってこんな目に遭わなきゃならないような人ではなかったはずなのだが、みなそれなりに自分の闇を抱えていて、中には遠山主膳のように、それがはっきりと悪業として顕れてしまう者もいる。 しかし菊は天然を通り越してちょっとお馬鹿さんなとこがあったり、何でもすぐ自分が悪いと思って謝ってしまったりするだけで、何ら人を害する意図を持たない、優しい優しい女の子なのである。 今回は最初の方と最後の方に少し顔を出す程度の小股潜りの又市、彼の活躍に期待した読者には少し拍子抜けのエンディングかも。 得意の「脅す賺す持ち上げる、騙す煽てる搦め捕る」も今回は控えめ。寿美屋の旦那に小言をがつんと言ったら詫び料三両出してきたとか、その程度。その後依頼人からもういいよって言われて手を引いて、その後しばらくしたらえらいことになってました・・・という感じ。死んじゃった人の中には又市からすると面倒見なきゃいかん義理のある人もいたのですが・・・。 いつもの又市さんにしたら全然活躍してないやん!!みたいな。最終章が反省会みたいになってるし!(苦笑) 最初から最後まで、どのキャラクターにも強烈な個性があって、食いつくように読み進んできたのに、愛着ができたところで皆様ほとんど全員死んじゃって、なんだか寂しいな~と、そういう読後感です。 【送料無料】数えずの井戸 【b0426】【中古】単行本(小説・エッセイ) 数えずの井戸【10P20Apr12】【画】【中古】afb お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.05.04 08:23:26
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