ひいちゃんのカピバラ生活

雲一つない晴天の、暖かい早春の朝。

こんな日にすることと言えば、
決まってるやん。

物置のお片付け。

ちょっと目を離したスキに、
ばあばがゴミの詰まった段ボール箱…

正確に言うと、
宅配便の段ボールをそのままゴミ箱として使こて、
満杯になったら、めんどくさいから
そのまま物置に放置していったヤツな。

そいつがどんどん蓄積していって、
物置がゴミの集積所みたいになっとる。

中には当然生ゴミも潜んどるんで、
気候が緩んでくると、
たちまち惨事が起こる。

　　物置ごと焼き捨てたろか、クソッタレ!!

ぶちぶち言いながら、
結局ひいちゃんが始末するハメになるんや。
毎度毎度…

古新聞にミカンの皮、
空き缶に中身の残ったペットボトル、
弁当のプラ容器　with　食べ残し。
ありとあらゆるものが混在するカオス。

　　・・・あり得んやろ。

そいつらを分別して、
カラになった段ボールをたたんでまとめて…

　　いったい何箱あるんや…

バキバキお片付けを敢行しておりましたら、

　　何や、これは…

細長い段ボールのフタを開けてみれば、
中からソフトボール大に丸めた新聞紙が
ころころ、ころころ…

　　ああああ、もぅッ！
　　ややこしぃことしよって！

丸まった新聞紙を、
いちいち伸ばすのもめんどくさいんで、
そのまま燃えるゴミの袋に突っ込んでおった
そのとき。

目ぇ、おうた。

段ボール箱の中の、ソレ。

　　ふぅぅぅぅわぁぁぁぁ～～～ッ!!!!

箱の底から見上げる、よどんだ目。

日本人形。身長およそ60センチ。

　　びっくりした、びっくりしたッ！

　　さいならッ！

あわてて燃えるゴミ袋に突っ込んだ
新聞紙の塊を元に戻して、段ボールを封印した。

よくよく見ると、
フタの部分に、宅配便のラベルが貼ってある。
宛先は、となり町に住んでいるアニキの家。
送り主は、見知らぬ女性の名前。

ばあばんチに駆け込んで、

　　ばあば、ばあばッ！
　　なに、アレッ!?

どうやらばあばも知らんらしい。

ばあばが本人に確認したところ、
『お祓いを依頼された』モノだと言う。
滝修行とかしてちょっと修験者気取りの兄ぃが
引き受けてきたんだとか。

そんなもん、わざわざこっち持ってくんなッ！
どぉせ、自分でも気持ち悪なったんやろぅ。

兄ぃいわく、

　　大丈夫、もうお祓い終わってるから♪

それやったらなおさら、自分チに置いとけや!!

どぉしょう、目ぇおうたやん。

お仕事終わって帰ってきたダーリンに一部始終を話し、
ことの理不尽を訴えると、

　　『見つけてくれて、ありがとう・・・』
　　って、今晩ひいちゃんにお礼に来るかもな！

おもしろがっとるけど、
ダーリン、分かっとる？

アタシんチは、アンタんチや。

　　ぎゃああああああッ！

絶叫するダーリン。

結局、彼女はお礼に来なかった。