テーマ:最近観た映画。(40136)
カテゴリ:映画
数十年振りに映画のハシゴをしました。 と言っても同じ映画館で一日に2本観たというだけの事なのです。
私の通うシネコンでは「午前10時の映画祭・何度観てもすごい50 本」と銘打って古の名画を上映するイベントを現在やっています。 当初は新作の「BECK」だけ観る予定だったのですが「ニューシネ マパラダイス」の名に惹かれて急遽早めに出掛ける事になりました。
「ニューシネマパラダイス」には完全版と劇場版があるそうで、今回 観たのは上映時間的に劇場版だと思うのですが以前観たのがどちらだっ たのか・・・評価され続けてきている歴史がこの作品の完成度を物語っ ているのは間違いないのですが、完全版に関しては賛否両論ある様です ね。
私はこの作品が論評される際の「映画の持つ力云々」といった切り口が ピント外れの気がして仕方が無いんですよね。あの故郷の人々を楽しま せた映画や映画館は二義的な意味合いにしか過ぎず、「パラダイス」の 比喩に近い存在として描かれているものであると私には思われるんで す。この映画の肝は全てアルフレードのトトに対する台詞に込められて いて、そこには映画が好きで、映写技師として生まれ育った町の善良な る人々を楽しませる事を喜びとしながらも、初老に差し掛かったアルフ レード自身が感じている「自分は留まる人であった」という認識と後悔 それ故の「無為感」に想いが及びます。 彼が本当に望んだ「パラダイス」が何だったかは解かりませんし、アル フレード自身にもそれが解からぬ歯痒さがある。しかし彼は「時間と距 離」が個々の人間にとっての「パラダイス」に大きな影響を与える事を 感じ取っているのです。
「此処はお前が居る場所じゃ無い」「この町を出て帰って来るな」とい う台詞も「長く同じ場所に居ると失われるものしか感じられない」とい う台詞にもそんな背景がある様に思われ、半世紀に渡り生まれ育った場 所に留まり其処で仕事もし続けている「私の思い」の琴線に触れるので す。 これは「良い悪いの問題」ではなく、また実際の量的な「幸福度」とも 違う、個人に蓄積された「感じ方」の問題であるのだろうと私には思わ れます。
トトの母親は最後に「此処はお前の居る場所ではない、此処に在るのは 幻だけ」と30年振りに帰った息子トトに告げます。
室生犀星の一節を思い起こします 「故郷は遠きにありて思ふもの、そして悲しくうたふもの・・・」 そんな処にパラダイスはある・・・ 私はこんな観点でこの映画を強く支持したいと思うのです。
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最終更新日
2010.09.25 02:55:34
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