テーマ:読書の愉しみ(1002)
カテゴリ:読書
「使える弁証法」 田坂広志 東洋経済新報社 図書館で借りて読んだ後で新本を購入した本です。 久しぶりに友人知人に贈っても良いかなと思わせてくれた本でした。 私はこの作者を知らなかったのですが、ヘーゲルの弁証法の根幹をこれ だけコンパクトに平易に纏めた著作を他に知りません。可也の頭脳明晰 の才の人物であろうと推察します。
いきなり「ヘーゲル」だの「哲学」だのといった単語が目に入ると「小 難しい本だな」と敬遠されるかもしれませんが、内容は平易であり、行 間も工夫してあり読み易く「ヘーゲル」も「哲学」も頭から消し去って 「ホホウ」と頷きながら読み進む事が出来る「人生のノウハウ本」的構 成になっています。
弁証法という言葉も難しく感じますが、巻頭から人間社会の流れの中で の実生活に根付いた事例に宛ながら其れに弁証法的な解釈を加えて行き ます。ビジネスマン、学生、主婦どの層にとっても既存の認識を少しは 揺さぶられる内容になっていると私は思います。 巻末近くまでは大きく分けて 「事物の螺旋的発展」の法則 「否定の否定による発展」の法則 「質から量への転化による発展」の法則 「対立物の相互浸透による発展」の法則 の4つに添って書かれています。何やら難しそうな表現が並んでいます がIT社会等の実社会での例で優しく説明がなされています。 そして巻末近くでヘーゲルの弁証法の根幹である 「矛盾の止揚による発展」の法則 に辿り着きます。 其処には「矛盾とは、物事の発展の原動力である」とあります。 「(物事の)割り切りとは魂の弱さだ」というのがキーワード。 矛盾に嘆き、其れを機械的に解消するのでは無く、矛盾を受け止め、其 れを変化発展させる事こそが進化を齎すという事なのですが・・・私の 説明より実際に読んだ方がわかり易いですね^^;
この本はヘーゲルの弁証法の概要を知るに留まりはしますが、日常での 目先の遣り取りで忙殺される思考に認識の変容と大局観を与えてくれる 内容であると私は高く評価しています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 私がヘーゲルに最初に触れたのは大昔の話。そうでなくても難しい内容 なのに輪をかけて難しく翻訳された本を四苦八苦して無理無理に読んだ 覚えがあります。 だから当時読んだ内容は殆ど覚えておりません・・・^^; 今回の様な本から興味をもって接していけば、幾らか違ったかも知れま せん。怖いもの観たさ?なら「日本ヘーゲル学会」で検索すると論文が 多数寄せられております.
現実の世界の情勢や国家・政治・社会を考える時にはロマンチシズムを 排したヘーゲル哲学のリアリズムを避けて通れません。 彼は個人より共同体、共同体より国家を優先し、現在の私達の頭に刷り込ま れている社会契約説はフィクションとして考慮していませんが、今回の紹介本 の様に個に焦点を当てても通用する射程をヘーゲルの哲学は持っている のです。
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