テーマ:徒然日記(23460)
カテゴリ:映画
全くの偶然なのですが、TV放映で録画してあった邦画「船を編む」を視聴した翌日に、ETV特集でドキュメンタリー「辞書を編むひとたち」の再放送を観ました。
映画の方は「何故、映画館に足を運ばなかったのだろう」と映画ファンとして反省する事頻りの良作でありましたが映像作品としての評価は何れするとして、この2つの映像では一般には殆ど知られていない辞書編集現場とプロの辞書編集者の在り様に触れ、大いに触発され感動を覚えました。 ドキュメンタリーは三省堂の大辞林を扱う編集部の話であり、映画の方もモデルとなったのは同編集部であったようです(未確認)。 辞書に関わる人間は四六時中常に用例採集カードを持ち歩き、新しい言葉と新しい使用例を狩り集め書き留め続けます。日々の新聞やあらゆる新刊の雑誌や書籍からの採集は当然の日常であり。時にはオジサン・オバサンに似つかわぬ合コンに出席したり、ファストフードで女子高生の会話を書き留め続けて気持ち悪がられたり、ほとんど執念のレベルで未知の言葉がありそうな場所を歩き、探し廻ります。 言葉は大まかに「一般的意味」(辞書等)と「個別的意味」に分類されますが、現代語として生きた言葉を辞書に乗せたいという編集方針の下に、社会で誤用されている言葉にまで彼等は配慮します。社会で汎用されていれば生きた言葉として正誤両方の語釈をいれて表記します。 映画では使われていませんでしたがドキュメンタリーでは「つかまえたっ!」という印象的な台詞が出て来ます。文字通り言葉を捕まえたという事なのですが、これは言語学や論理学の現場の会話の中で使われる台詞の様で私も一度だけ直に聞いた事があります。彼等は飽く事無く延々と言葉をつかまえ続けるのです。 そうして集めた膨大な言葉を一つ一つ吟味し、語釈を加えて採用候補とするのですが、大辞林クラスだと10年前後の制作期間が掛かるので一度採用された言葉の更新も必要であり、それは入稿直前まで続けられます。地味で根気の要る仕事で、出版社では決して日の当たる部署では無いと思われますが、彼等の言葉の番人としてのプライドを感じる映像でありました。まさしく「人は言葉」であり、辞書はその文化を支えてきた非常に大きな要素であるのだと考えます。 電子化が進み、紙媒体との立場が逆転しても其の重要さは変わらずに更新され続けて行くのでしょう。私自身もネットで殆どが済んでしまうので紙媒体の辞書を引く事は殆ど無くなりましたが、決して辞書が不要になっている訳では無いのですね。 便利になって忘れがちな、先人達が綿々と培って来た価値あるものを再発見させてくれた貴重な二つの映像でありました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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