空のオルガン

ずっと引っかかってる出来事をいくつか振り返ってみる。今日はその１、１０才ごろの話。

　母がお菓子の入った小さな箱をくれた。頂きものだと思う。
　これ、くれるの？箱ごと？わーい！と喜んだ私。
　開けて、食べようとしたところで、「おいしそうやね、１個ちょうだい」と母が言った。
　嫌や、と断ったら。なんて冷たい人間なんだ、一つくらいくれてもいいやんか、そんなことを言われた。
　渋々一つ渡そうとしたら、「もうええわっ！」と激怒した母。

　それって、そんなに怒られなあかんことなんか？とその時思った。
　もらったんやから私の物やん。箱ごともらえてとっても嬉しくて、「これ全部私のものなんや～！」って舞い上がってた直後に、やっぱりちょっと返して、って言われたら、「え？」って思うよ。あげるかどうかは私が決めたらええんちゃうん？そんな、人でなしみたいに言われるほどあかんこと？

　母が言わんとしたことはわからなくはないんだけど。

　人に何か譲渡したら、もうそれは自分の物じゃないでしょ。
　それを相手がどう使おうが、口出しすることじゃないし。NOと言われたら、残念だけど、抗議するくらいなら譲渡前によく考えてよ。
　裁判なら、返して欲しいと言われて返さなかったからって、罪に問われることはないじゃない？

　それはそうなんだけれども、人道的にどうよ？って言いたいんだろうけど。
　与えておきながら奪うのって、初めから持ってないよりダメージ大きいと思うのよ。それは非人道的にならないの？

　お菓子一つで大仰な、渋ったあなたの心の狭さを、お母さんは嘆いたんでしょう、というのも理解できるけれども。　
　
　母はもう忘れているだろうけど、私はよく思い出す。　

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