ややこしや。
わかる人はすぐにわかる、このフレーズ。我が家では、今まさに「ややこしや」旋風が吹き荒れている。おそらく、その番組はここ数年の「日本語ブーム」に乗ってスタートした。現に、監修は「声に出して読みたい日本語」シリーズの斉藤教授である。「NHK教育番組が変わります」を合い言葉に斬新なアイデアで、子供向けでありながら大人でも思わず唸ってしまうような質の高い番組づくり。ずいぶんと試行錯誤を重ね模索されたことと思う。番組を見ればすぐにわかるが「こんなこと、子供にわかるはずがない」と思われる、何とも高尚な内容。時代やジャンルを問わず、数々の日本の名文や名言が次々と登場する。中でも圧巻なのがあの野村萬斎が、独特のこぶしをきかせ厳かに力強く、伸びやかに詠い上げる狂言である。いったい誰が想像できたであろう。梨園に生まれた子供ならともかく平凡なふつうの2歳児が狂言に没頭する日常を。「ややこしや~ややこしや~」で始まるその一節は、息子を完全に虜にした。ソファーの上をステージに萬斎氏と一緒になって、上体を左右に揺らし首を傾け、かといっていつものように笑いながら踊りふざけるのではなく口は真一文字。目はかっと見開いて、怖いくらいに真剣そのものの顔つきで「ややこしや~」を繰り返す。「ややこしや」という言葉がすっかり気に入り、街で、歌舞伎役者のイラストが載った看板を見たり羽織袴や能面のディスプレイを見たりしただけでも「あ、ややこしやだ!」といってところかまわず、大声で「ややこしや~」と例の調子で踊りだす始末。わかる人にはわかるだろうがわからない人は、???のはずだからちょっと恥ずかしい。しかし、意味よりもまず、その言葉の持つリズムを楽しもうというコンセプトは本当に大当たりだと思う。息子に限らずこんな子供が今、たくさんいるのだろう。「ややこしや」シリーズはすでにCD化されていて来月には、DVDも発売されるのだ。多分、買ってしまいそうである。その部分を録画したものを何度も巻き戻して再生させられるのにはちょっと疲れたし、買って損はない気がする。「ややこしや」ちなみに番組は「にほんごであそぼ」平日の朝8時から。夕方5時45分から再放送。