テレメンタリー
あらためて言うまでもないことだが世の中にはいろんな立場の人がいる。それぞれの暮らし、人との関わりや経験の中で培われた、その人ならではの生き方やその人だからこそ言える言葉に出会いたくてわたしは、その仕事を選んだし、本当に好きだったのねぇと、最近になってしみじみそう思う。今は子育て母ちゃんまっしぐらな生活を送っているがそれでも、日々のニュースが気になるし、事実は小説より奇なりでジャンルはやっぱりノンフィクション。「情熱大陸」をはじめとするヒューマンドキュメンタリー系の番組から、どうしても目が離せない。5年前まで、私は毎日、テレビカメラと共に走り回っていた。数え切れないほどいろんな人に会って、マイクを向け、その表情やその人から発せられる言葉を記録することがとにかく楽しかった。無論、テレビに向かって話をしたいという人ばかりではない。熱意と誠意と根気をもって相手に向かい、あなただから話そうと言ってもらえるまで頑張ることもあった。そうやって、ふつうでは到底、巡り合うこともないであろう人々との縁を作り、そしてその縁を通して、世に発表するための情報をカタチにしていく。果たして、その情報が、それを受ける人々にとって有益か否かということは常に考えさせられるところであるが、せめて「へぇ」という感嘆かもっと欲を出せば「ふんふんなるほどね」「そういう考え方もあるんだね」といった小さな発見や感動につながればといつも願っていた。そんな想いが久しぶりに蘇る。夢をもって仕事をしていた頃が、まるで昨日のことのように。かつての同僚が、この夏、ある番組を完成させた。6年前に起こった佐賀のバスジャック事件で被害にあった一人の女性のその後の生き方を追う、ドキュメンタリー。女性はバスの中で、犯人である17歳の少年から何度も刃物で切り付けられ、一緒に乗っていた友人は殺害された。それでも、彼を恨んではいない。むしろ彼に謝りたいのだと言う。なぜか?女性の気持ちを知りたくて、同僚が、長い時間をかけて、コツコツとインタビューを撮り続けてきたものである。興味のある方はぜひご覧ください。★テレメンタリー「私と少年~バスジャック事件被害者の生き方」 9月3日 日曜日 午前6時~6時半 KBC九州朝日放送テレメンタリー2006公式HP