眠たいなら寝ればいい
そんなに眠たいんなら、さっさととっとと寝ればいい。誰も咎めはしないのだしむしろ、さっきからそうしたほうがよいと幾度も、促し、導き、誘い、揺らし、ありとあらゆることを手助けしてあげているにもかかわらず、まったく子どもというものは。大人にとってまず当たり前な、むしろ憧れの快楽ともいえる、眠たいときには寝るという常識が子どもにはなかなか通用しない。飲んで出して、ひたすら寝るを繰り返して、ある程度の大きさになってきた、目の前のこの子しかり。最初の子のときも、不思議でならなかった。なぜにそこまでして迫り来る睡魔と闘うのかね?睡魔に力及ばずと、なぜにそこまで嘆き悲しみ叫び泣くのかね?さんざん寝て、やっと胎内から抜け出し、新生児を卒し、少し歩けるようになりそうだからって、そんなに焦ることはない。眠たいときにはゆっくりリラックスして寝ればいいのだよ。寝る子が育つというではないの!まだ起きていたい。いやなんとしてでも起きておかねば。自分が寝てる間に何か楽しいことが起こってはたまらない。ここで寝るわけには…だけどなぜかだんだんと視界が狭まっていく。ぶんぶんと首振り、見開き頭をかきむしる。あぁだめだやはり堕ちていく。まずいまずいと思わず絶叫身体をねじりそらし、両手足をじたばたともがいてみる。汗を流し涙を流し、床を転がり、力の限り応戦しかしもはや限界か遠のく意識への動揺か、あるいは母の顔が消えることへの恐怖か、おいおいと泣きながら、最後の砦である親しき乳房に取り入って、ついに力尽く。死闘のあとの寝顔はなんと安らかなことか。ふうと溜め息ひとつ。休戦。束の間の平和共にその柔らかな頬にすがり、スヤスヤと堕ちることができたなら。今のうちにとやらねばならぬことに優先順位をつけ、そらいけと動く。平和時間は予測不可能。余ればラッキーだけれどまさかの10分時間切れということもある。いつ終了の鐘がなるのかドキドキ。たまに幻聴が聞こえたりもする。ほんとにまったくもう。誰に文句いっても始まらないが、悶々とした日々