春告父
春告鳥が鳴く季節になると、毎年思い出される。
2006年2月16日に書いたこの日記。
午後、天神の雑踏を歩いていたら携帯がなった。珍しく田舎の父からだった。携帯電話を嫌っていた父が、去年母から切望されて、ついに持つことになったのだが普段はほとんどが受信専用。それも運がよければつながるといった感じで、大抵はどこかに置き忘れている。機械オンチの父はメールはもちろんのこと、受話器のない電話にもいまだ不慣れな様子なのだ。そんな父が自ら、自分の携帯から私の携帯に電話をかけてきた。定年退職しても、なんやかんやと忙しく動き回っている父が、昼下がりにかけてきた電話。「どうしたん?なにかあった?」と思わず早口になる。「いやあ、なんでもないよ。久しぶりにのんびり 家におるから元気かなぁと思って。なんか周りがうるさいね」「うん、今、天神を歩きよんよ 車とかビル風とかの音が響きよんじゃない?」「そうね、あ!そうそう さっきね、山に犬を散歩させにいったらねぇ ウグイスがなきよったよ~。今年初めてばい。 初啼きやね~!春が来よるよ~ってこりゃあ早く あんたに教えてやらなぁと思って電話したんよ じゃあ、またね」 すぐに電話は一方的に切れた。春告げ父さんだった。ちょっと胸があつくなって、なぜか涙が出た。