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語りと筆しごと~書家香玉のうずまき帖

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2021年12月12日
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戦争断固反対。核兵器廃絶。
選挙ポスターよろしく、あるいはプラカードを掲げ、拳をあげて叫ばずとも、至極当然のことだと自信を持ってそう思う。
わざわざ、きいきい声でどこかの宗教家や政治家みたいに言いたくはない。ぼくができる「絵を描くこと」で、只ひたすらにイノチを伝える仕事をしたい。



12月4日より故郷の田川市美術館で始まった画家・黒田征太郎さんの展覧会で、そのメッセージをしかと受け止めた。 


きっかけは、火垂るの墓などで知られる作家、野坂昭仁著の「戦争童話集」との出会いだそうだ。
戦争によって、兵士は、母親は、子供は、動物たちは、、一度読んだら忘れられないお話ばかり。童話という優しく親しみやすい文体でありながら、そこに書かれている内容はあまりにも理不尽で切なくて悲しい。凡人の私にはとても挿絵など思い浮かばない。
ただただ頭の中が、もしその子供が私だったら、もしその母が私で共に焼かれる子供が我が子だったらと恐怖と悲しみでいっぱいになりぎゅうっと目を閉じるだけだ。



しかし黒田さんはそこに絵を添え続けた。
怒りなのか、慈愛なのか、救いの手なのか
強靭なようで柔らかで、そのお話の世界と見事に溶け合っている。

そんな黒田征太郎さんに旗揚げより45年間、公演のたびにポスターを描いてもらっているという東京の劇団、椿組が、黒田さんが絵を添えた戦争童話集を朗読やお芝居を交えてこの秋、新宿で11日間にわたって公演を行った。
黒田さん繋がりで上京しこの公演に触れた田川市美術館の文川副館長、是非とも田川にも来て欲しいとお願いして本日、1日限りの公演が実現した。
素晴らしい機会を作って頂き感謝だ。

子供の頃より思い出深い、田川青少年文化ホールへ。15時より約1時間半、座長の外波山文明さんの語りに導かれながら、4篇のお話があった。




目で追う読書の世界に声が加わり、目の前に生きた人の表情があり、イメージを掻き立てる動作があり、スクリーンいっぱいに映し出される黒田さんの絵。
ただ本を読むよりもずっと印象深く心に染み渡った。
時折、朗読やナレーションの仕事をすることもある私としては、その手法自体にも強く惹かれた。そうだ、最近は保育園で子供達に絵本や紙芝居を読んであげる機会も多い。そんなところから私なりに始めてもよいのではとも思った。

その時代を生き、その体験をその人の声で直接聴ける機会は年々少なくなる。
必ず体験者が1人もいなくなる時代が本当にやってくる。
だからこそ大切な話を本で書き残す人、絵を描く人、音楽や舞台や映画やドラマでリアルに伝える人。
そしてこのような優れた作品を広く紹介しようと頑張る人々とメディアの力。
絶対必要不可欠。

生まれつき想像力が豊かすぎて困るほどの性分。前世できっと何かあったのだろう私は子供の頃から頭上で飛行機の音が響くだけで全身から血の気がひくような恐怖を感じた。高校野球が始まるサイレンも、ヒューっと独特の音を発して空中を落ちて行く花火も空襲を連想して逃げ走りたくなる衝動にかられる。

昭和20年8月15日より戦後生まれというのだろうが、我が父は、九州筑豊の田舎町で、広島に原爆が落とされた翌日に生まれた。
家の庭に掘られた防空壕にもよく抱かれて入ったという。
戦後などないという黒田さん。
私たちは今もあの時代から引き継がれた戦争の実態を、理不尽な殺し合いの代償をそれぞれが重く受け止めて、それぞれの手法で次代に伝える努力をしなければと思う。
無関心は最大の冷酷。
きいきい声でなく、至極自然に自分の言葉で。





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最終更新日  2021年12月13日 00時38分05秒
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