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語りと筆しごと~書家香玉のうずまき帖

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2022年05月08日
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カテゴリ:書家として
福岡市に暮らして20年以上。長く筆仕事に携わってはいますが、いまだその創作活動一本では自立できていない未熟者の私にこの春、思いがけず、大変恐れ多いミッションが舞い込んできました。

なんと、伝統のお祭り、博多どんたくの源流である博多松囃子の傘鉾に、一筆書かないかとのこと。

西島伊三雄さん制作の博多いろはかるたより

国の重要無形民俗文化財でもある博多松囃子は、どんたくパレードの先頭をゆく古式ゆかしい神事で、5月3日、4日の二日間にわたって、馬に乗られた福神様、大黒天、恵比須さまの三福神が福博の街を御巡幸するものです。



それぞれの神の傘として絹垂れの傘鉾もお供するその厳かで艶やかな様子は、お祭りの象徴として毎年、テレビや新聞で目にしてきましたが、まさか、そこに自分の筆文字を加えて頂けるとは、夢にも思わず、光栄と緊張の極みでした。

お声かけいただいたのは、恵比須様の傘鉾を担当する生粋の博多っ子の兄上達で、子供の頃から博多祇園山笠を盛り上げる恵比須流の方々。
揮毫する内容は、おめでたい言葉であれば特に指定なしとのことで、最初は、日頃より親しくさせていただいているご縁の延長のような感じで快諾させていただいたのですが、いざ、その絹布をいただいて、その大きさと、未知の質感と、たった一枚しかないという現実に呆然としました。


何を書くかよりも、どうやったらちゃんと筆書きできるかがまず心配で、試し書きもできないし、果たして普通の墨でよいものかどうか、、悩んだ末に、新天町にある老舗の書道具店、復古堂を訪ねてみることにしました。

最初は布書きに適した墨はという問いかけから、具体的にあれこれ問答するうちに、もしかして歴史あるお店だからそのものズバリを尋ねた方が伝わるかもと、おそるおそる、実は、あの、傘鉾に、、という話を切り出してみたら、おそらく何代目かで私と同年代ほどの店主、え??それは凄い!おめでとうございます。それは素晴らしいですね!と満面の笑みで喜んでくださり、たちまち的確なプロのアドバイスを頂きました。
もともと博多人形師などが絵を施すことが主流の絹垂れは、当然、細部まで艶やかな色模様がかけるよう、滲み止めのコーティングがしてある。よって、通常の墨汁でも大丈夫。よりくっきり見えるように少し粘りのある濃いめのこの墨汁でと。あっさり潔く専用の墨汁が決まりました。
帰り際まで、楽しみですね!頑張ってくださいね!恵比須の傘鉾、気をつけて見ますからね!!と励ましてくださったことがなんとも嬉しく、単純なわたくしはそのお言葉に背中を押され、俄然、やる気が湧いてきました。
せっかくならば墨汁のみならず、なんならちょっと絵でも添えてみようかという大胆な気持ちにまでなれ、一緒に金色の色墨も購入。わくわくと帰ってきたのですが、さて、それから2週間。。

意外なことに、書きたい内容はすぐに固まり、迷いはありませんでした。


普段からお名前の字で言葉を創作する私は、恵比須という文字から広がるイメージをゆらゆら、風に揺れる絹布にのせてみたいと考えました。
過去の傘鉾写真を見てみましたが、勇ましい漢字作品の立派なものが多かったので、あえて、かな作品にしたかった。それも平安調の繊細なやつではなく、どしりとした、なおかつ誰でも読める親しみやすいかな文字。イメージは尊敬する博多の図案屋、西島伊三雄さんの筆字です。

博多といえば西島さん。そう、博多どんたくのタイトル文字も西島さんのものではないでしょうか。


私は西島さんの描く童画が大好きで、ニュース記者時代、アトリエまでおしかけて、その偉業を取材し、インタビューをとり、特集番組を作ったことがあります。ああ、西島さんが生きていらしたら、どんたくの象徴とも言える傘鉾に字を書かせていただくこと、なんと仰るでしょうか。

博多の伝統行事に関われるなんて!!
と、しばらく浮かれ気分の高揚した気持ちが続きました。

さっそく、模造紙や新聞紙を張り合わせ、本番と同等の大きさの練習紙をいくつも作って、配置決めをし、何枚も何枚も書きました。
それはそれで楽しかったのですが、いざ、本番に、行けない。。なんせ1枚しかないのです。
筆を入れたが最後、そのまま突っ走るしかない、書き心地、筆運びの感触がまったくわからない。
どうしようどうしよう。。失敗したらどうしよう。深く考えれば手が震え出す。 

今日はやめておこう。明日にしよう。
よし今日こそは、、、やはりもう1日待とう。

そうするうちに、つぎはぎ練習紙を作るのにも疲れてきて、ご依頼いただいた恵比須の兄上にお渡しすると約束した日が間近に迫ってきました。

最初は練習紙に書いた画像を、こんな感じでよいですかね?と送信してみたりしていたのですが、そのうちに、もう見せんでいいよ。自分が思う通りに、のびのび書いてくれたらそれでいいけんと返信がきてそれきりに。

よし!!もうやるしかない。

それは3月10日。
私が渾身の力を振り絞って初めての出産を終えた日。今年20歳になった息子の誕生日の日。

たっぷりと墨を含ませた大筆をどんと置き、最初の横棒。思った以上に通気性がよく、下に敷いた新聞にジュワッと墨が吸い取られました。横滑りはなかなか良いけど、カーブを描くスピードに布が引っ張られる。変に動かしたら新聞紙に吸い込まれた墨が別の場所に裏移りして作品が汚れそう。。

でももう、後戻りはできない。

ある程度、位置決めをしていた鉛筆書きの目印をたよりに、なんとかバランスを失うことなく、ゴールへ。練習の時の方があきらかに勢いがあった。が、なんとかかんとか形にはなった。

ほっとして、上下に、踊る童子の絵を走り書きみたいに入れました。何故かこちらはまったく緊張せず。
良くも悪くもなんとか書き終えた安堵に満ちた落書き、せめてもの遊び心。


さて、この下手な絵に見覚えある方はいますか? 

そうですそうです、大胆不敵にもあの仙涯和尚のマネをしました。それくらい気楽に親しみ深い作品にしたかったのですが、果たして。。。


博多の恵比須様は全国的にも珍しい夫婦円満の夫婦神。老若男女が笑顔合わせて、力合わせて、比翼連理と活躍すべく世を願って書きました。

えみあわせ
ひよくれんり
すべからく


実際、傘鉾となった様子を目にした5月1日。
うやうやしく御神入の神事に招いていただき感無量でした。


3日〜4日の博多どんたくは天候にも恵まれ、三福神のお姿と、薫風にたなびく傘鉾の列に心から手を合わせたい、ありがたく幸せな気持ちになれました。








未熟ゆえの手に汗にぎる筆仕事ではありましたが、コロナ禍を超え、3年ぶりの博多どんたくにこのような形で関われて感謝でいっぱいです。


書をご依頼くださった恵比須流の白川兄と。


博多では、古くから、傘鉾の下をくぐると無病息災という言い伝えがあります
どなた様も、コロナの災いを吹き飛ばし、夏に向かって、えびす顔でどうかお元気でお過ごしください。


尊敬する西島伊三雄氏の博多いろはかるたより拝借






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最終更新日  2022年05月15日 10時22分11秒
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