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カテゴリ:映画をめぐる冒険
ロバート・デュバル(1931~) 名脇役として知られる。その他の 出演作『テンダー・マーシー』 『フォーリング・ダウン』など多数 ―――ところで、映画館から出てきたとき、ついつい自分の振る舞いを映画の登場人物に重ねてしまうことってありますよね? 祝祭男】 それはつまり、乗り移っちゃうっていうことですよね。 そういうことってありますね。私としては、それは映画の持つ大きな効能の一つ、だと思っているんです。 他人を演じること、それも特に気に入った役どころの振りをしてみること、 これには大きな精神療養効果があると思うわけなんです。 ―――ああ、何か判る気がします。 例えば自分が幸福な映画の登場人物であるように一日を過ごすと、 なんだかいい気分になりますしね。 祝祭男】 そうなんですよね。それは映画の魔法だと思うんですけれども、 私としては、ロバート・デ・ニーロのある作品、 それからマーロン・ブランドとか、ビル・マーレイ、 あとマルチェロ・マストロヤンニなんかの映画を見ると、 ついつい彼らの振る舞いを真似してみたくなります。 全然似てないんですけれど(笑)、 なんかその気になっちゃうところがありますよね。 ―――映画の世界って、なんか心癒されるところがありますよね 祝祭男】 映画の登場人物は決して孤独ではあり得ないですからね。 いつも「観客」に見守られているってところがありますよね。 それに、ここから物語が始まる、っていう場所に常に立ってますしね。 映画の登場人物にとっては、人生や世界は、 目の前で解き明かされていくミステリーみたいなものですよね。 だから、そういうものを自分の実人生に移し替えると、 日常を違った場所から見ることができるんだと思うんです。 ―――なるほど 祝祭男】 私に今起きている現象でですね、実はこんなことがある。 自分の過去の記憶っていうものがね、だんだんイタリア映画みたいになってきてるんですね。 要するに、記憶をイタリア化しちゃう、書き換え現象が起きてるんです。 そういうのって危ないことかも知れないんだけれど、 ある種の『憧れ』が単なる『憧れ』を通り越して、記憶に浸透し始めている。 だから、この映画見たことある、っていう記憶だけじゃなくて、 だんだんこのイタリア語の響き、懐かしいなあ、みたいなことになってしまう(笑) ―――いやあ、記憶なんてのは実際好きに書き換えちゃっていいですよね(笑) 祝祭男】 未来を変えられるってんだから、過去だっていいじゃねえかってね(笑) で、まあ、話を元に戻すと、こういう振る舞いをしてみたいなあって思う役どころにですね、『ゴッド・ファーザー』の中でロバート・デュバルが演じる、トムって男がいます。もちろんヴィト・コルレオーネ=マーロン・ブランドの魅力は突出しているんだけれども、ロバート・デュバルに痺れてしまいます。 ―――ドンの相談役ですよね。養子で、いつも自分の役回りをわきまえていて、 それでいて隠しきれない男気に溢れている。 祝祭男】 そう、その通りですね。あれは「かっこいい」。 ひとまずそういうより他、言葉が見つからないような気がしますね。 まあ、しんどい世界なんでしょうけれども、あの頭の禿げ方からして、 なんて「かっこいい」んだろうって思いますね(笑)。 もっとドーンと目立ちたい欲望もあるんだけれど、あの生き様がね。 ―――なんか、「かっこいい」っていうだけで話が止まっちゃいましたね(笑) 祝祭男】 ところが、そのロバート・デュバル、 『地獄の黙示録』になると、まあとんでもないことになっちゃうわけで(笑) あれも大好きですね。 敵の死体にトランプのカードを撒いて、戦場でサーフィンする。 ああいう人格も、日常の意識に取り込んだら、 割と無敵になってストレスなんて感じないかもしれないですね(笑) ―――ははは。なるほどね。なかなか面白いとおもいます。 ええっと、じゃ、まあ今日はこのへんで。 それではまた! 聞き手 祝祭男の恋人 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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