9/27 新日本フィル 第436回定期演奏会 トリフォニーシリーズ第2夜「薔薇の騎士」
すみだトリフォニーホール 15:00~ 3階中央 R・シュトラウス:楽劇「薔薇の騎士」 元帥夫人:ナンシー・グスタフソン オクタヴィアン:藤村実穂子 ゾフィー:ヒェン・ライス オックス男爵:ビャーニ・トール・クリスティンソン ファーニナル:ユルゲン・リン テノール歌手:佐野成宏 栗友会合唱団 東京少年少女合唱隊 新日本フィルハーモニー管弦楽団 指揮:クリスティアン・アルミンク 演出:飯塚励生 新日フィルトリフォニーシリーズ、毎シーズンの開幕恒例、ホールオペラ公演。今年は「薔薇の騎士」であります。 結論から言うと、70点といった所でしょうか。 ここ最近、かなり舞台演出に凝っていたのですが、今年は財政難か、はたまた演目的な必要性が薄いからか、舞台設定はかなりシンプル。普通のホールの舞台前側3分の1を演技用に使って(両サイドは半分以上奥まで使って)、その後ろ側にオケがやや窮屈気味に入っている感じ。舞台背後、パイプオルガンのあるバルコニーなどはほぼ使わず。 まぁ、それでも第1幕はちゃんとベッドも置かれてたし、それで取り立てて問題はないというか、不満はないというか。一応「コンサート・オペラ」ですからね。 トリフォニーは、やはり基本響き過ぎなので、フルオーケストラが入って歌手が歌うと、ちょっとよく聞こえ過ぎというか、まぁそれを考慮してどう演奏するかが課題な訳ですが..... 新日フィルとアルミンクの出来映えは、決して悪くはありません。ただ、第1幕から、どうもフレージングが....短い。息が短いというか保たないというか。第3幕の3重唱のあたりは、それでも流石に綺麗にまとめてきていたのだけれど、やはりフレージングの取り方、というよりフレージングの意識の仕方がもうちょっと大きく取って欲しいなぁ、というか。 一つ一つのフレージングが短過ぎる、とは言わないんですよ。ただ、R・シュトラウス、特に薔薇の騎士あたりだと、レガートで通す訳ではないにせよ、次のフレーズを意識して、どう繋いで行くかを念頭に置きながら演奏して欲しい訳です。それが、あの終幕に向けての3重唱のうねるようなクライマックスを作っていくし、その後の2重唱も映える。 それと、やはり、ピアニッシモが欲しい。無いとは言わないけれど、やはりピアニッシモで思い切りよく絞る、というのがもう一つ弱い。 この辺は、やはり新日フィルとアルミンクの限界なのでしょう。まだアルミンクも若いし、新日フィルも幾らアルミンクと練って来たとはいえ、日本のオーケストラの特質は出てしまうよね、というところでしょうか。 このレベル、他のオケと指揮者では無理ではないかな?しかも定期公演でとなると..... 去年の新国での東フィルに比べれば、こちらの方が魅力的。東響では太刀打ちすら出来ないでしょう。定期公演ということもあって、アルミンクへの拍手が他の歌手陣に比して一際大きかったのもむべなるかな。 トリフォニーホールの舞台前面で歌っているので、歌唱の方は十二分に聞こえます。今回はキャストも取り立ててのダメは無いです。まぁ、もうちょっと柔らかく歌って欲しい、とか思う事はあったけれど。 元帥夫人のナンシー・グスタフソンは「さすが」の一語に尽きます。この人の元帥夫人が聞けるだけでも十分。声量で言えば、オクタヴィアンの藤村実穂子やゾフィーのヒェン・ライスに比してかすかに控え目ですが、何と言っても歌が上手い。3重唱での歌唱は涙物。 一方、オクタヴィアンの藤村は、悪くないけど、言えば歌い過ぎというか....声はよく出てるし、その点では不満はないけれど、3幕の3重唱から2重唱は、もうちょっと合わせて欲しい。確かにオクタヴィアンは「男役」だし、主役級だし、オーケストラも音はでかいし、こういう歌い方はありだけど、ここで一番大事なのはアンサンブルではないかなぁ。正直、私は、この人あんまり好きではないのです。海外でも評価が高いのは知ってるし、実際聞いていい声だなと思うのだけれど、こういう所で抑えてでも合わせるくらいのことをやって欲しいと思うのです。 ゾフィーのライスは急遽の代役だったようで、まぁ、それにしてはよく出来てました。ちょっと藤村に引っ張られ過ぎかなと思うけど、代役という事を差し引かなくてもいい歌唱でした。そう、この人の声は結構華があって、それが却ってグスタフソンの声との対比が微妙に出来ていて、そういうところもよく出来てたかな。 オックス男爵は、まぁ、可も無く不可も無く、かな?細かい所を言い出すと色々無いこともないですが、男爵は、このオペラ、音楽的には主役ではないですからね。むしろ調和を乱す者なんだし。存在感のある男爵を演じておりました。まぁ、強いて言えばもうちょっと色気があってもいいかな? 後はまぁ宜しかったのでは。1幕での歌手役の佐野成宏がおまけでいい声聞かせてくれました。 結論は、70点。但し、「薔薇の騎士」というオペラとして、という話でありまして。これが海外からの引っ越し公演であったとしても、このくらいだったら70点と付けるかな、ということであって。これを定期公演として、数千円で観てしまっている訳で、コストパフォーマンス高過ぎます。まぁ、これがあるから定期会員になってるんですけどね。 今年聞いた中でもトップレベルの公演の一つかなぁ。