3/28 東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ演奏会
東京芸術劇場 17:00~ 2階左側 モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲 歌劇「羊飼いの王様」~ "彼女を愛そう"(アミンタ) 歌劇「魔笛」~ "ああ、私にはわかる、消え失せてしまったことが" (パミーナ) / "何を恐れるか" (夜の女王) ピアノ協奏曲第22番 幻想曲 K.397 「すみれ」K.476 / 「ルイーズが不実な恋人の手紙を焼いた時」K.520 「夕べの想い」K.523 グラスハーモニカのためのアダージョ K.356 小さなジグ K.574 ロンド K.511 ベートーヴェン:交響曲第7番 ソプラノ:番場ちひろ フォルテピアノ:ピート・クイケン 東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ 指揮:有田正広 東京バッハ・モーツァルト・オーケストラ(以下TBMO)。フルート奏者の有田正広率いるピリオド楽器のオーケストラ、というよりアンサンブルと呼んだ方が正しいような団体です。 今回の公演は、古の演奏会の様子を再現、ということで、3部構成3時間の長丁場。もっとも、オーケストラの演奏は第1部と第3部のみで、第2部はフォルテピアノとソプラノによる演奏、という内容。まぁ、個人的にはそういうのを聞くのは好きなので、いいって言えばいいんですが、だからなんだということもなく...... ま、音楽さえ面白ければいいんですが、じゃぁどうだったか? 第3部、ベートーヴェンの交響曲第7番が白眉だったかな。 そもそも、TBMO、下手、と言って悪ければ、決して巧くはない、というのが正直な所じゃないかと思います。時々ズレて迷走するし、管、特に金管は結構外す。まぁ、古楽器だから安定性に難があるのは多少は仕方ないんですけどね。ただ、いわゆる「縦の線が合う」タイプではありません。 それと、好き嫌いを言えば、古楽器を古楽奏法で弾いているので、例によって音符と音符の間が空きます。正直に言って、好きではありません。けれど、フレージングを必要以上に強調しているか、と言えば、決してそうではない。「切ることになっているから切る」のではなく、「ここで切れるのが自然だからはっきり切る」というところでしょうか。又、例えばデュナミークは、やはり落差激しく強調されているけれど、ピアニッシモからフォルティッシモまで使っていて、その間もちゃんとある。ただ音がでかい、とか、ただコントラストを付けている、というわけではないのです。編成は、6-6-4-4-2。この小振りの編成で、はっきりとはしてしまうけれど、きちんとデュナミークが出来る。 こういうアンサンブルでベートーヴェンの7番をやる。 非常にリズムのはっきりとした演奏。勿論、リズムが命と言われる曲ではありますが、うっかりするとリズムを聴いているような演奏。しかも、やや速め。こうなるともう殆どタテノリです。 そしてまた、この演奏、ステレオタイプと言いたくなるような所が随所に出てくる。管は「象が踊るように」咆哮するし、最終楽章は運動会かと言いたくなるような疾走感。挙げ句に、最後にはホルンがベルアップで吠える。しかし、このアンサンブルは古楽器オーケストラ、ホルンはバルブ無しタイプ。しかも、そう言っちゃなんですが、決してとても巧いわけではない。当然、外れるホルン。それでもやるのかベルアップ。 一言で言うと、やり過ぎなんです。やり過ぎだし、決して好きなスタイルではない。好きではないけれど、面白いのです。そう言えるもう一つの理由は、ある種の潔さがあるのです。何処に重点を据えて音楽を作るか、という点で。 上述の通り、決して「縦の線が合う」ような上手さではないのですが、そこではなくて音楽としての流れが自然に出来上がっているのです。だから、幾らやり過ぎても、音楽としては崩れないし、聞く方も受け入れられるのです。好きじゃないんだけど、面白い。 まぁ、これに較べれば、第1部の方は割合普通にモーツァルトやってたかな、という気がします。とはいえ退屈はしませんでした。 独唱は、第1部でオペラアリア3曲、第2部でフォルテピアノ伴奏で3曲。 まぁ、雰囲気で聞かせてしまうタイプのソプラノ、かな。あまり発音がはっきり聞き取れるタイプではなく、音程も悪い訳ではないけれど、あまり安定しているとは言えない。でも、取り敢えず雰囲気でなんとなく通してしまう、というか。 フォルテピアノ独奏のピート・クイケンは、クイケン・ブラザーズの一人、ヴィーラント・クイケンの子息だとか。古楽界も2代目の時代なのですね..... 今回のフォルテピアノは、ややチェンバロ的な、弦を叩くというより弾く感じのある音色。このへんの聞こえ方は、必ずしも楽器だけの問題ではないんでしょうね、きっと。第1部のピアノ協奏曲と、第2部の伴奏&独奏で登場でしたが、協奏曲よりは独奏や伴奏での方が面白かったかな。演奏の問題というより、この編成といえども、フォルテピアノで二千人級のホールではやはり協奏曲は辛かったかな。少なくとも、独奏で聞く方が楽しかったかも。