10/31 プラハ国立歌劇場「アイーダ」
東京文化会館 17:00~ 2階正面 アイーダ:ディミトラ・テオドッシュウ ラダメス:マリオ・マラニーニ アムネリス:ヨラナ・フォガショヴァー アモナスロ:ミゲランジェロ・カヴァルカンティ ランフィス:ミロシュ・ホラーク プラハ国立歌劇場合唱団 / バレエ団 / 管弦楽団 指揮:ジョルジョ・クローチ 演出:マッシモ・ガスパロン 元々行く気は無かった、というより他の予定を入れて「うーん、完璧♪」とか思っていたのですが、突如招待券を貰ってしまい(一体どんな運の使い方だろう....)急遽予定を組み替えて行ってきました。普段よほどの事が無いと買わないあたりの席..... でも、まぁ、あまり遠慮はしないんですが(苦笑) 元々行く気が無かった最大の理由は、アイーダという演目、外題役のテオドッシュウ、この二つにあまり興味が無いこと。お金払って頑張って行く気はあまりしない。でも、行けるもんなら、それなりに面白かろうと思うから、行く。まぁそんな感じであります。 で、テオドッシュウ。そうねぇ。いいにはいいんですけどね..... 昔、アンナ・ボレーナを聞いた時にも思ったのだけど、とにかく線が細いんですよね、この人。大体が、アンナ・ボレーナを歌う人がアイーダを歌うというのは、別にいけない訳じゃないし、出来ない事ではないけれど、あまり尋常ではない。 で、テオドッシュウはというと、確かに歌えてはいました。声も確かに透明度があって、繊細ではある。丁寧に歌ってもいた。ただ、2階の奥で聞くと、確かによく歌えてはいるんだけど、繊細という以前に「線が細いな」と感じてしまう。ある意味不健康な声かな、と。sotto voceと線の細い声とは、ちょっと違う。いや、線の細い声でもsotto voce は出来るのですが..... 相方のマラニーニ。結構古顔のヴェテランですが、こちらも声量はある方ではない。その代わり、丁寧でしっかりした歌を歌います。その意味では、テオドッシュウとは相性は良かったのかも知れません。 アムネリスのヨラナ・フォガショヴァーは、多分座付級の歌手だと思いますが、アイーダ、ラダメスのご両人に較べると、やはり見劣りはすると思います。どちらかというと力技タイプで、繊細で丁寧、というタイプではない。むしろ大味かも知れない。ただ、この種の座付歌手には色々あって、この人、地力でもって歌いこなすという感じの人かな、と思います。良くも悪くも座付の歌手で、今回のような東欧圏の歌劇場を聞く楽しみの一つではあります。ある意味健康的な歌。 そう。そうなんだよね......健康的、なんですよ...... テオドッシュウやマラニーニの歌が不健康、とは言わないんですが。ただ、例えば、テオドッシュウの歌に私がちょっと引っ掛かりを感じる理由の一つは、彼女の歌が研がれ過ぎてる、と感じさせる部分があるからなのです。sotto voce、と言いますが、確かにテオドッシュウはsotto voceで歌って聞かせられるけれど、本当にギリギリ、なのです。決して物凄く小さく歌ってる、あるいはそのように聞かせているわけではないけれど、例えばグルベローヴァの「場内に響き渡るピアニッシッシモ」ではない。響き渡らない、のです。それには色々な理由があるし、そもそもグルベローヴァのように歌うのを誰彼構わず要求する訳でもないのだけれど、やはり説得力の有る無しは問題になってしまうと思うのです。 テオドッシュウ。聞いている時は、確かにいいね、と思うんですが、どう言ったらいいのか.......聞いて「いいね」で終わるのです、私の中では。栄養として取り込み、血となり肉となる、という感じが無い。或いは、聞いた先のものが弱い、というか。場内の雰囲気からしても一般にはそうではないのでしょうが、私はむしろ、フォガショヴァーのような、ある意味大味な田舎芝居の歌が、しかし、なんとなく残るのです。歌手としての評価、歌唱としての良し悪しとは別に、後々まで、例えば何年か後に、「ああ、あの時のアイーダは...」と思い返して覚えていそうなもの、自分の中に残りそうなものとしては、アムネリスの方かも知れないな、と思うのです。なんとはなしに。 まぁ、単純に、「アイーダなんてドヒャーッと大騒ぎして聞かせりゃいいじゃねぇか」てなレベルでの感想かも知れませんが。 連日の公演で疲れ気味なのか、合唱はいまいち。それこそパワー不足と言うか。劇中のバレエも、もう一つ視覚的にシャキッとしなかったというか。オーケストラも、なかなかお疲れ気味でしたかね。 演出は、プラハらしい、低予算で頑張ってます的なもの。シンプルで殆ど動かさないけれど、照明やら何やらで頑張ってそれっぽくやってますという感じ。まぁ、そのシンプルさもまた良いし、工夫して違和感なく見せてました。 まぁ、諸々差し引いても、全体としては良かったと思います。確かにこの値段でこの席ではちょっと、と思うけど、この内容なら、自分が買うなら....という席で観て聞いて、一応満足して帰ったと思います。勿論招待券だったので何も文句はありません。 それと、当たり前だけど、やっぱりオペラは生で観るものですねぇ。いや、アイーダはそれほど好きなオペラではないのだけれど、生で観るとなんだかんだ言っても引き込まれて、面白く観てしまいます。