9/10 N響定期演奏会 (第1962回 2022年9月Aプロ 1日目)
NHKホール 18:00〜 3階右手 ヴェルディ:レクイエム ソプラノ:ヒブラ・ゲルズマーワ メゾソプラノ:オレシア・ペトロヴァ テノール:ルネ・バルベラ バス:ヨン・ヴァンチョル 新国立劇場合唱団 NHK交響楽団 指揮:ファビオ・ルイージ 久しぶりと言えば久しぶりです。まぁこの数週間は、予定も無いわけでもなかったけれども、体調を崩したりもあって、結局この公演までお預け。いや、体調崩したっていうのが、夜中に突然38度超えの発熱という、これ絶対あかん奴や、ついにトレンドの波が来たぜヒャッハー!というものだったのですが、自信満々(?)で翌朝発熱外来行って検査して貰ったら「陰性です。お薬出しときますね」......え? でも実際、翌日には熱はスッと下がって、その後自前の抗原検査でも陰性続き......じゃぁ、あれ、なんだったんだろう?という......それももう2週間以上前のことだし。体調崩したんですかねぇ。寒暖の差も激しいし。 というわけで、シーズン入りです。これがシーズン初日。更に、NHKホールの改装成って定期演奏会はこの日が初めて。更に更に新首席指揮者ファビオ・ルイージ就任お披露目公演、とまぁ盛り沢山。なかなかの賑やかしであります。 今シーズンからNHKホールに還ってきたわけですが、コロナ下&NHKホールを離脱していた間に無くなっていた自由席が廃止になりました。溜池や池袋でやっていた全席指定方式を継続だそうです。値段も、今までのほぼ固定価格から変動制に変更した模様。一番安い、今まで自由席1,500円だったE席は、たとえばこの日は3,300円、同じAプロでも来月のブロムシュテットの回は2,800円、再来月の井上道義は2,000円.....これがAプロ。Cプロ、これは今までも比較的軽めのプロという位置付けでしたが、基本休憩なしの短めの公演になるようで、こちらは基本固定の模様で、E席は1,600円。 安く気軽に、はある程度堅持しながら、ということでしょうね。Aプロの、人とプログラムで変動させる、というのは、どうなのかなぁ。たとえば今回のは大掛かりに合唱もソリストも入るし、そういうのは値段が変わります、というのはまぁ分かるけれど、指揮者で値段変えるのは...... お値段高くなるのは、首席指揮者のファビオ・ルイージ、桂冠名誉指揮者のブロムシュテット、名誉指揮者のパーヴォ・ヤルヴィ。でも、正指揮者の尾高忠明は、「通常」料金。なんだかね。いいけどね。 さて、改装成ったNHKホール。.........えーと、何が新しくなったのかな?正直よく分かりません。エレベーターは、まぁ、前からあるよね。増えてもいないし。椅子は.....変わらないよね。まぁ、天井耐震工事が主目的だったらしいので、そういうものでしょう。天井裏見に来てるわけじゃないしね。 客席は当然満員......かと思いきや、意外と空席があります。あれですかね。やはりN響のコアなファンは、ファビオ・ルイージにはあまり興味がないのか、ヴェルディのレクイエムに興味がないのか、はたまたまだコロナ禍であまり出てくる気がないのか。こちらも空いてそうなところを選んで買ってるので、それもあるでしょうけれども..... で、どうだったか? 結論から言うと、まぁ、悪くはないけれど、それなりに期待値が高かっただけに......という感じでしょうか。敢えて言うと......1+1が2ではなく、3にも4にもなる、みたいな言い方をすることがありますね。そういう意味で言うと、0.8とかを3つ重ねて、指揮者が掛け算したけど、3には届かなかったかな......というような。 N響なんですが、全体的になんというか......やっぱり、下手になったなぁ、と思うんですよね。 まず、弦が、やっぱり問題。怒りの日の冒頭、トゥッティの強奏で入るところが、どうにも.....「よくある日本のオーケストラの金属的な強奏」になってしまっているんですよね。でも、久々のNHKホールだからなのかも知れないけれど、どうにも力が入り過ぎている気がする。管も、ピッコロがやたらやかましく、美しくない。いやまぁそういうものだという話ではあるのかも知れないけれど、必ずしもそうではないと思うんですよね。この辺はまだ指揮者がそれを要求したのだ、ということかも知れないけれど。他の管も、なんというか、微妙に合わないというか、やはり全体的に如何にも精度が悪いのです。単純に合う合わない、ではなく、入りがおっかなびっくりというか、合わなくても「こうだ!」と入るくらいの蛮勇があってもいいと思うんですけれどもね。それで一応曲になるくらいの腕はあるだろう、とは思うんですけれども。その辺が、まぁ、0.8かなと。 合唱は、新国立劇場合唱団ですが、まぁ、いつもながらの出来ですね。今ひとつ。これはオケもそうなんですが、冒頭のピアニッシモが、弱いというよりは、聞こえない、か細い感じ。でもそうではないなと思うのと、その後最終的にフォルティっシモへ向かっていく、そのダイナミクスが弱い。表現力の問題だと思います。それと発音がね.....ちょっとカタカナなんですよね。まぁ、ラテン語ってそういう感じでもあるから、そこはともかく......0.8ですかね。 歌唱陣は、女声陣はロシア人なんですね。勿論ウクライナ戦争前にアサインしているのでしょうし、公的な地位に就いているわけでもなさそうだし、その辺がプレトニョフなんかとはまた違うとは思いますけれどもね、個人の資格で来てるからいいんだ、ってことなのかも知れませんが、まぁ、ちょっと複雑。だけれども、それ以上に複雑なのは、それほどではないなぁ、ということ。これは男声陣も同様。NHKホールだし、声はあるにはあるんでしょう。ただ、瞠目するほどではないなぁと。強いて言えば、女声陣、特にメゾがまぁまだ良かったけれども。この辺は、今は歌手がなかなかいない時代ではあるので、仕方ないのではあるけれども、要するに中途半端なんですよね。まぁ、やっぱり0.8。 多分、ファビオ・ルイージは、それを統合して、それなりにまとめ上げていると思うんですよ。全体的に破綻しているわけではないと言っていいと思います。ただ、0.8+0.8+0.8=2.4を、1.2掛けくらいにはしていると思うけれども、2.4 x 1.2 = 2.88 なんですよね。いやあれは1.5倍だという人がいるかも知れないけれど、それでも3.6。いやそもそもそういう話じゃないんですよ、きっと。いい演奏っていうのは。 古い話だけれど、NHKホールでヴェルディのレクイエム、というと、昔ムーティがミラノ・スカラ座を振った公演を思い出します。調べたら2000年の公演だったそうで。そうか、もう20年以上前なのか。あれは良かった。最後の最後まで気を抜くところのない演奏でした。そりゃオケも合唱も歌手も指揮者も....って言い出すと比較にならないと思うかも知れないけれど、そもそも計算式なんか浮かんで来ないんですよね。そういう演奏って、日本のオケだってあるんだけれど、言えばN響でもなかったわけではないんだけれど、ということかなぁと。