1/29 東フィル定期演奏会 (第979回オーチャード定期 2023年1月)
オーチャードホール 15:00〜 3階正面 シューベルト:交響曲第7番 ロ短調 D759 「未完成」 ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調 (ノヴァーク版) 東京フィルハーモニー交響楽団 指揮:チョン・ミュンフン 東フィルのシーズンはカレンダーイヤーベースなので、1月はシーズン幕開けになります。まぁ、4月始まりよりはいいかな...... シーズン初めはチョン・ミュンフン。本当はバッティストーニが聞きたいと思いつつ、まぁ、一応音楽監督だし。というか名誉音楽監督ってなってるんだけど、これはどういう意味なんだろう.......まぁ、概ねお客で一杯になるし。ところがこの日は意外に客席に空席が。ガラガラとかいうことではないんですけれどもね。でも、ほぼ満員だったりするのに比べると、ちょっと不思議。あれですかね。マーラーとブルックナーの違いなんですかね。個人的には、最近は、マーラーよりブルックナーの方がいいかなと思ったりするんですが。 で、演奏の方。 まずはシューベルト。未完成ですからね。まずは低弦の唸りから.....おおう。重い。太い。響く。というか、弦が全体に太い。それもその筈。この日の弦五部の編成は14-14-12-10-8。これは、オーチャードホールでもかなり厚い編成です。実はこの編成、後半のブルックナーの編成と同じ。どうしてこうしたのか。或いは、弦チームの一体感を前半から維持したかったのかも知れません。とはいえ、今時のシューベルトとしてはかなり重い編成なのは確か。減らそうと思えば減らすのは難しくないと思うのですけれどもね。 で、どうだったか?これ、良かったです。滅多に聞けないいい演奏と言っていいと思います。好みの問題というのはあると思いますが、現代のホールで現代オーケストラで演奏する以上、現代オーケストラとしてどう鳴らすか、というのは、オーセンティシティよりもある意味重要な問題だと思っています。その意味で、この演奏はオケを十二分に鳴らし切るという意味で非常にいい演奏。編成に余裕があるので、無理に力む必要もなく深い響き。こういうちゃんと鳴ってる演奏、なかなか聞けないのですよ、実は。特にシューベルトは最近ではやたらと「オーセンティックティック」(間違いじゃないですよ、嫌味ですよ。なんならもう2つ3つティック付けましょうか?)な演奏を目指すのだけれども、東フィルでオーチャードホールなら、むしろ「正しい」アプローチの演奏であるでしょう。そもそも未完成って弦を鳴らして聞かせるに足る音楽であると思うので、こういうやり方はある意味正しいし、音楽にも合っていると思うのですよね。最近はこういうスタイルはあまり聞かれないだけに、面白かった。 で、後半のブルックナー。これもいい演奏でした。弦はシューベルトのままで、ブルックナーとして格別大きい編成とも言えないですが、バランス的には低弦を厚くしているので、響きは十分重厚。シューベルトで聞かれた密度の高い演奏で、楽しめました。ブルックナーの演奏としては日本のオケとしてはかなり高い水準だったのではないかと。 ただ、シューベルトに比べると、幾つか傷も。まず、ブルックナーで入ってきた金管がどうも弱い。シューベルト組と比べるとどうも品が無い。この辺は、まぁ、お里が知れるといったところでしょうか。もう一つは、やはり、最終楽章に至ると、さすがに弦が息切れ気味というか、ちょっとへたりましたかね。全体に悪くはないけれど、その辺は限界だったのか。 チョン・ミュンフンの時は、概ねいい演奏にはなるんですよね。あれですかね、練習時間を多めに取ってでもいるのか、皆気合の入り方が違うのか、後者だとすれば、そうじゃねえだろいつも本気出せや、って話にはなるのですが..... シューベルトもそうだったのですが、ブルックナー、曲が終わるや否やぶらぼおおの罵声が。嫌だねぇ。コロナ禍でぶらぼおおおが禁止になったのは数少ないいいことだったのだけれど、これが戻ってくるなり、いや公式には戻ってない筈なのだけれど、汚い声を演奏直後に余韻もまともに聞かずに聞かされるとは。あのねぇ、ブルックナーって確かに爆音音楽みたいに思うかも知れないけれど、弦をきちんと鳴らし切る演奏であればこそ、ちゃんと響きを、余韻を、最後まで聴いてなんぼなのですよ。そういう音楽じゃないんだよ。やれやれ。折角いい演奏だったのにね。 この日は1月末で閉店になる東急本店最後の週末。公演後に寄りましたが、まぁこうなると皆やって来るという感じではありますが、それほど混んでもいなかったかな。東急本店は三十何階建だかの高層ビルになるそうで、併設のBunkamuraも4月一杯だそうです。でも、オーチャードホールは生き残るらしく。本当に生き残るのかなぁ。ちょっと心配だけれど、いいホールなので、残って欲しいです。