4/29 新国立劇場「シェイクスピア・ダブルビル」
新国立劇場 14:00〜 3階左手 「マクベス」(音楽:ジェラルディン・ミュシャ) マクベス:福岡雄大 マクベス夫人:米沢唯 振付:ウィル・タケット 「真夏の夜の夢」(音楽:F. メンデルスゾーン 編曲:ジョン・ランチベリー) ティターニア:柴山紗帆 オベロン:渡邊峻郁 パック:山田悠貴 振付:フレデリック・アシュトン 東京フィルハーモニー交響楽団 合唱:東京少年少女合唱隊 指揮:マーティン・イェーツ GWに突入です。後半はLFJなので、前半はウロウロと迷走するのです。 暇だなぁと思って週の初めに何があるか見ていたら、新国でバレエの公演がある。見たらまだ結構安いチケットが残っていたので買ってみました。バレエは年末のくるみ割り以来。年に1, 2度は見てる気がします。 今回はシェークスピアものということで、マクベスは委嘱作・世界初演だそうですが、音楽はチェコの作曲家・ミュシャ、というのはこの人結婚相手が画家のアルフォンス・ミュシャの息子だったのでこの名だそうですが出自はスコットランドだそうで、この人が1960年代に書いた音楽を用いたものだそう。一方の真夏の夜の夢は音楽はメンデルスゾーンのを編曲したもので、これも新制作ではあると。各々1時間ほど、通しで休憩入れて2時間半あまりの公演。 まぁバレエはよくわからないのではありますが、取り敢えずマクベスは面白かったような。真夏の夜の夢はもう一つかなと。 まずマクベス。あれはとにかくイベントが多い劇で、なにしろ沢山人が死ぬ凄惨な劇ですので、好みはともかく(いや私個人は嫌いなわけではないですけどね)飽きる暇がない。それをともあれ1時間のバレエに凝縮してしまうのだけれど、その過程で、凄惨な場面を残らず入れ込んでいる格好なので、まぁ、飽きる暇はない。次から次へと凄惨な場面が続くので、それで飽きちゃいそうな気はしますが。よく言えば1時間劇的緊張を保った舞台であります。よく出来ていると言えば出来ている。 音楽的には、正直言うと、申し訳ないけれどちょっと出来の悪い映画音楽的な感じではあります。1960年代の作品とは言え、いわゆる前衛現代音楽ではないし、といって何か大変にキャッチーなものでもないし、と言ったところでしょうか。演奏が凡庸というよりは、音楽が凡庸なので演奏する方もそれ以上やりようがない感じかなぁと。ただ、バレエの音楽としては、まぁ出来は悪くないのでしょう。 肝心の踊りの方は、そもそも新作なのもあって、クラシックバレエのような見せ方ではないけれど、非常に印象的でした。というか、全体におどろおどろしかった中でも、ダンカン王の幽霊が出てくる場面のおっかなさと言ったらもう凄まじく。オペラなんかだと色々照明に仕掛けで演出しますが、バレエで、しかもかなりスピード感のある振付なので、比較的シンプルな装置だけで、踊り手の動きでここまで表現するというのは、なかなか凄いなと思います。もう一つは、マクベス夫人が亡くなって、その死体とマクベスが踊るという場面。死体ですからね。力が入らない態で踊るので、見た目以上に大変なんだと思うのですが、これも見事。 全体としては、そんなわけで、飽きる暇もなく面白い舞台でありました。敢えて難を言えば、既に触れた音楽の問題と、全体に人が死に過ぎかなというのと、そんなところでしょうか。欲を言えば、加えて、終盤の展開がちょっとバランスが悪いかなとも思いますが、まぁ、バレエですし、踊りが良かったので、いいかなと。 真夏の夜の夢は、これはちょっと..... 同じように1時間に凝縮された舞台ではあるのですが、そもそも喜劇というのもありますが、こちらはそれぞれのある意味たわいのないエピソードの積み重ねなので、劇的緊張があまり出ないのですね。結果、次から次へと場面は変わるけれど、それほど印象が強くないというか......その前にマクベス見てますからね。ちょっと霞んでしまうかなとも。面白いといえば面白いのは、バレエ化した結果なのか、主役がどう見てもオベロンとティタニアであること。言われりゃそうなのですが、若い男女四人はあまり主役然としていない。ボトムも同様。舞台的にはロバになるので受けてはいましたけれども、この舞台としてはオベロンとティタニアの話であることは歴然、だったかなと。 音楽はメンデルスゾーンのものを編曲しているのだけれど、どうも今一つ。音楽としては、劇音楽のものを主にしているようなのだけれど、序曲のフレーズが繰り返し出てくる感じなのですね。あの序曲、すらっと演奏される分には悪くない音楽だと思いますが、そう何度も何度も繰り返し出て来られても.....まぁ、はっきり言って、飽きます。加えて、メンデルスゾーンの音楽は元々バレエ用ではないので、踊りにあまり会ってないような気がします。演奏が悪い?いや、あれは、演奏が悪いから音楽が生きない、というよりは、音楽に難があるから演奏の頑張りようがない、の方が近かったんじゃないかなぁと。これはマクベスでも言える気はしますけれども。 踊りとしては、正直、パックが一番よく動いていて良かったかと。言い換えれば、オベロンとティタニアは、主役ではあるけれど、もうちょっと頑張ってもらってもいいんじゃないかなと。 まぁ、全体には、マクベスが印象が強い分、誰が悪いわけでもないけれど、もう一つかな、といったところだったかと。 2演目通しての感想は「まぁ、面白い」というところかなと。悪くないですよ。確かに。音楽的にはもう一つですけれどね。この辺はしょうがないですね。