9/29 アンドラーシュ・シフ
東京オペラシティコンサートホール 19:00〜 3階右側 J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 〜前奏曲とフーガ第1番 ハ長調 BWV846 カプリッチョ「最愛の兄の旅立ちに寄せて」BWV992 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17(16)番 変ロ長調 K.570 ハイドン:アンダンテと変奏曲 へ短調 Hob.XVII:6 ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI:52 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 op.53 「ワルトシュタイン」 ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 op.109 <アンコール> J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988 〜アリア ピアノ:アンドラーシュ・シフ 最近毎年のように来てくれるシフ。今回は秋の初め....の筈が、都内は日中30℃越え。昔はこんなことなかったんですけれどもねぇ。少なくとも暑さ寒さも彼岸まで、だったのに...... シフは今回はこの公演と、日曜日のミューザ川崎での公演。最近のシフの公演で採用されている、演目を事前に決めない、知らせないスタイル。プログラムを見たら、「予習」が出来ない、という声が一部にあったそうで.......はい?予習?アホな....... プログラムのインタヴューでは、シフ曰く「私自身が考案したもの」だそうですが、リヒテルも、たとえば「リストプログラム」みたいな形で曲目までは決めずにリサイタルをやってましたし、アルゲリッチも自分が弾く曲は決めずに、というスタイルを採ったことはあったので、まぁ、そこまでは......いいんですけどね。というか、そういうスタイルは昔からあるよね、ということであってね。予習が出来ない?何を言っているのやら.....むしろ新鮮に音楽を聴けるのではないかと思うんですけれどもね。むしろシフの解説が入るので、下手に予習なんかするよりよほど面白く聴けると思うのですが。 いや、もっと言うと、そもそも最近のシフのレパートリーは概ね決まっていて、本人も段々絞り込まれていると言っているくらい。しかもその大半は何処かで聞いているような曲なのだから、何の予習が必要なものなのかと。あまりみっともないことは言わないで欲しいというものかと。 実のところ、今回のリサイタルで演奏された曲も、確かに何処かで聞いたことある曲ばかりです。平均律の第一曲はともかく、2曲目のカプリッチョは去年と同じ。モーツァルトは去年所沢で弾いてるし、ハイドンのソナタは2017年に弾いているし、ベートーヴェンもop.109は2011年と2014年に弾いている。 そうなんですよね。マンネリとは言わないし、弾きたいものを弾いているのだからそれでいいじゃないかとも言えるのだけれども.... 実はシフはこの間夏休みにザルツブルクに行って聞いています。その時のプログラムは、ゴールドベルク変奏曲のアリア、フランス組曲第5番、モーツァルトの小さなジグ、ブラームスの間奏曲、シューマンのダヴィッド同盟舞曲集、半音階幻想曲とフーガ、メンデルスゾーンの厳格な変奏曲、テンペスト。日本での曲目は、割と似通ってますかね..... ただ、これも、大体がレパートリーの中ではある。無論レパートリー自体は広いし、こういうプログラムをその場なのかどうか、作れるのは凄いんですが..... ちなみにこのザルツブルクのリサイタルは、シフ所有のピアノフォルテで、ライプツィヒをテーマにしたプログラム、ということではありました。ベートーヴェンは.....どうなんだっけか。関係してるのかしら?ライプツィヒと。まぁ、それはともかく。 演奏は良かったです。ただ、最近、シフの演奏を聞いていると、時々違和感を感じることがあるのですよね。多分こちらが勝手に記憶しているのと違ってたり、拍を拾い損ねてたりするのだろうと思うのですが、時々迷走しているように感じることがあるのですよね。それは傍に置くとして、まぁ、納得の演奏。特にベートーヴェンはずっと聞いていたいような演奏。シフの弾く最後の三つのソナタは、ずっと聞いていたいくらいですが、op.109は、本人も好きなんでしょうね。 終演は22時過ぎ。これもお約束。今回は一番安い筈のB席で、それでも8,000円したのですけれども、これはあれかしら。コンサートホールの残業代が入っているのかしら...... 演目は見ての通り古典派で終わってますので、ミューザ川崎ではロマン派に振った内容になるのかしらね。 一つだけ。不満じゃないんですけれども。シフのリサイタル、凄くいいと思うんですよ。ただ、正直、最近あまり他にいいリサイタルを聞けていないような気がする昨今、ちょっとね、リヒテルとか聞きたいなと思うんですよ。いや、生で、って意味ではないので、CD聞きゃいいじゃないか、というだけの話ではあるんですけれど、でも、ちょっとそう思ってしまう部分が、なきにしもあらずという。何かね、リヒテル的なものが聞きたいなぁ、というね。上手く言えないんですけれども。