10/29 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
サントリーホール 14:00〜 ピット席 ドヴォルザーク:序曲「オセロ」op.93 チェロ協奏曲 ロ短調 op.104 <独奏アンコール> 鳥の歌 ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 op.88 <アンコール> ブラームス:ハンガリー舞曲第5番 チェロ:パブロ・フェランデス チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:セミヨン・ビシュコフ チェコ・フィル。なんだかんだ結構聞きに行ってます。来るたび毎回、というわけではないですけれども。思えば30年以上前からの付き合いです。最初の時はノイマンとビエロフラーヴェクのダブルキャストで、ビエロフラーヴェクで聞いたのが最初。あれはなんだったか、多分ドヴォルザークではあったのだと思います。最近で一番覚えているのは、東日本大震災の翌々日のサントリーホールでの公演。あの時もドヴォルザークで、新世界でしたっけ。いや、ドヴォルザークばっかりではないんですけれどもね。結構前のNHK音楽祭ではベートーヴェンの第九で、第3楽章の冒頭の入りの物凄さに思わず唸ったし、ブロムシュテット指揮でのブラームスというのもあったなぁと。 要するに、チェコ・フィル、好きなんですね。元々オケは音、響きを聞きたいと思って聞きに行くので、その意味ではベルリン・フィルより好きかも知れないし、ウィーン・フィルと同等だと思っていたりする。コストパフォーマンスでは両者とは比べ物にならない。いや、ベルリン・フィルが上手いのは分かるし、一般には音的にはウィーン・フィルの方がいいってことになるんでしょうけれど、コストパフォーマンスに目を瞑っても、迷うところだなぁと。弦の音は両者に遜色無いと思うのです。少なくとも実際に聞く上では。それでやっぱり全然安いし、チケットも取れますからね。そう、そういえば、今日は2階左右のB,Cブロックあたりや後ろの方にそこそこ空席があったようで、どうやら完売ではないらしい。ちょっと勿体無いよな、とは思います。というわけで、この秋はベルリンもウィーンも振ってチェコ・フィルだけ買ったのでした。まぁ、演奏会の日程の問題もあるんですけれどもね。 指揮はセミョン・ビシュコフ。ユダヤ系ロシア人という現今世界情勢化にあってはなかなか香ばしい出自でらっしゃいますが、1970年代にほぼ亡命同然でアメリカに移住したという人。まぁ、レニングラードで振ったりとかもあるので、まるで縁を切っていたわけではないようですが、アシュケナージとかと似たようなところでしょうかね。結構あちこちで活躍してきた人ですが、体系的に録音を積み上げたタイプでもないので、よく知ってる割に掴みどころがない人といいましょうか.....でもこの5年ほどチェコ・フィルの音楽監督なんですよね。実力はある人。 なんとなく「チェロ協奏曲と8番」と思っていたので、気が付いたらチェロがいないままに始まるという感じ。いやこれは曲目ちゃんと見てない方が悪い。ドヴォルザークの序曲は3部作なんだそうで......初めて聞いたような気がする。いや、3部作っていうのをですがね。というわけで最初は序曲「オセロ」。まぁ、正直、これが「オセロ」なのか.....という感じ。こちらとしてはどうしてもヴェルディのオテロのイメージが強いですし、シェークスピアの戯曲自体結構激しく見えてしまうので......演奏はいいんですけれどね。 そう。聞いてるのはサントリーのピット席でしたが、やはりオケがいい。もう遠慮会釈なく響いてきます。前日にN響をみなとみらいの舞台脇の席で聞いてましたが、もう弦の音が全然違うよね、という。 2曲目はチェロ協奏曲。独奏のパブロ・フェランデスは1991年スペインの生まれ。新進気鋭といったところらしいです。私は今回聞くのが初めて。というか、まぁ、誰が演奏するかより「久々にドヴォルザークのチェロ協奏曲」という期待の方が強かったかなと。時々聞きたくなる類の曲があるんですよね。禁断症状じゃないけど、私の場合はドヴォルザークとエルガーのチェロ協奏曲。元々チェロが好きというのはあるけれど、それ以上にこの2曲はオケ共々ホールで鳴り響くのを聞きたいなと思うのですよ。 演奏は大変結構。チェロ独奏も悪くないし、オケもいい響きだし。まぁ、聞いてる席も悪い割に楽しめたと言って良かったと思います。もうちょっと何かこうあっても良かったかも知れないですけれども。アンコールは鳥の歌。これはかなり良かった。なんとなく、聞き覚えている鳥の歌はもうちょっと悲しげなイメージが強いのですけれども、もっと落ち着いた感じの鳥の歌、でしたでしょうか。 後半は交響曲第8番。 聞き慣れている曲ではありますが、これは面白かった。というか、チェコ・フィルの身上である弦が実力を如何なく発揮。弦五部編成が、14-14-12-9-8という変則編成。これ、チェロは10本が本来じゃないかと思うんですけれどね。これだと低声部が、高声部とバスに挟撃されて苦しかろうというのが普通でしょうが、いやいや。チェコ・フィルの心臓部は弦五部の中でもチェロにあるのです。このチェロがもう素晴らしいの一言。第一楽章の第二主題だったか、その提示部でチェロが歌うのがもう絶妙。第二楽章の冒頭も素晴らしい歌。正直、好きだと言いつつも、最近のチェコ・フィルは以前に比べると落ちたな、と思わなくもないのです。特に、以前第九の第3楽章冒頭、木管から弦へと音を受け渡していく時の等質性、ああいうものが失われてきたなとは思ってはいるのですが、一方で弦五部、その心臓部のチェロはやはり素晴らしい。凄く歌えるのですよ。この辺はうっかりするとベルリンもウィーンも敵わないかも知れないなと思ったり。いやまぁ、ベルリンはそんなに聞いてないですけれどもね。ウィーンは、まぁ、それなりに聞いてるから.... 引き合いに出すのも悪いと言えば悪いけど、前日に聞いたN響のブラームス。あれは確かにあれで良かったけれど、そもそもN響は歌わないんですよね。歌えないということだけれど。ブラームスとドヴォルザークでは違う?いやいや、そもそもブラームスはドヴォルザークの師匠格ですし。師匠より交響曲たくさん書いてますけどね。ブラームスだって十分歌謡性のある音楽だと思うけれど、歌わないんですよ。で、N響がドヴォルザークやろうとすると、今度は、歌おうとしてしまうんですよね。歌わなきゃ、歌わなきゃ、って。自然に歌えない。そういうのが、チェコ・フィルはもう自然なんですよね。ん?だってこういうものでしょ?という感じに弦が歌う。 アンコールはハンガリー舞曲。ブラームスです。ドヴォルザーク一色のプロだからスラヴ舞曲集やりそうなものですが、そこはブラームス。 今度の週末も聞きに行く予定なのです。楽しみ。