映画「ドライブ・マイ・カー」【感想】
チケットを買った時、3時間の上映時間はちょっと長いな…と思っていたのに、もう少し続いて欲しい、と思うところでこの映画は終わった。うっとりするような映像美の中で、すっと感情が抜け落ちたような言葉たちが淡々とつながれて行く。その言葉の連続に少しずつ、本当に少しずつ感情が追いついていき、気持ちと思いが込められていく。この言葉につながる言葉はなんだろう…こう言われたら、僕ならどう返すだろう…3時間ずっと、僕は自問を繰り返し、自分の感性を試していた。だけど、ほとんどの問いに答えは何も思い浮かばなくて、たまに思い浮かんでも、スクリーンに流れる言葉とはほど遠かった。世間並みの予想など一切寄せ付けない言葉の連続に、僕はすっかり魅了された。ラスト近くになって、西島秀俊が三浦透子に吐露した言葉が自分のイメージに少し近かった時、その事がひどく残念に思えたくらい、自分の感性をはるかに超える世界に酔っていた。静かに感動できる映画が僕は大好きで、ドライブ・マイ・カーは期待のど真ん中に来てくれた。面白かった、とか、感動した、とか、いい映画だったね、では終わらない、おそらくずっと心のどこかに残り続ける作品だと思う。全ての出演者が素晴らしい演技を見せる中、パク・ユリムさんの心がこもった演技には、とりわけ惹きつけられた。