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大通公園で、名物の焼きとうきびを食べてみたい…。 子どもの頃からの願いが、この日ようやくかなった。 土曜日の午前中、500円玉を握りしめて「とうきびワゴン」の前に立ち、「焼きとうきびを一つください」と言った。 思いがけず子供じみた言い方になったけど、お店の人は「はいどうぞ」とビニール袋に入った熱々の焼きとうきびを手渡してくれた。 朝9時に開店したばかりの「とうきびワゴン」に行列はなく、だけど既に美味しそうな香りが漂っていた。 昔と変わらない香りだった…。 ワゴンの近くのベンチに腰を下ろし、まだ静かな公園を眺めながら、香ばしいタレが塗られた焼きとうきびを一列ずつ食べていった。 小学校に入る前の僕は、親に連れられて大通公園を通る時、いつもこのタレの香りにガマンができず「ねぇねぇトウキビ食べようよっ!」と騒いでいた。 だけど僕の親は「帰ればあるから!」と言うばかりで、買ってもらったことは一度もなかった。 確かに家の庭にはとうきびが植えられていたし、茹でたとうきびをおやつで良く食べていた。 それに、当時の値段はわからないけど、今「とうきびワゴン」で買うと一本500円。豊かとは言えない子育て中のわが家には、それは限りなくムダで不必要な出費だったのだろうと思う。 その「ムダな出費」をこの日やった。 小さい頃の僕へのプレゼント。 大げさだけど、ようやく固い殻を破れたような気分になってゾクゾクした。そのあと、良く分からないけど少ししんみりとした気持ちにもなった。 実のところ、タレが着ている服にこぼれ落ちないように、少し前かがみで食べなければならず、ゆったり公園を眺めながら…という感じでもなかったのだけど、とうきびは期待通り美味しかった。 傍から見れば、公園のベンチに座ったおじさんが独りで黙々とトウキビを食べているだけ。 でもその時、僕の頭の中には子供の頃のいろんな情景やいろんな人たちが浮かんでいた。 とても懐かしくて愛おしいひとときだった。
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Palacio1988
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