カテゴリ:読書
ゲス野郎が予想もしない結末で、ひどいシッペ返しを喰らう二篇が殊更、小気味良く、声にな らない笑いがこみ上げた。 ふと気づくと、携帯が何度か鳴っていた。 大方、バイアグラを買わないか?というたぐいの迷惑メールか、 見知らぬ番号からの着信もあったが、そちらの方は、明日、届く予定のエドウィン・ピンクパ ンツの件を知らせる宅配屋からのものだろう。 しかし、掛けてみると、いつか聞いた、あの妙に間延びした高めの声が聞こえて来た。 「あ~…師匠、おやすみのところすみません。今、ここ埼玉のブリュッセルにいるんです」 彼の携帯番号を聴いていなかったことに今更ながらきづいた私だった。 ファミレスで落ち合った私は彼に聞いてみた。 携帯を肌身離さす持っているわけではないとなると、気づかなかったかも知れない。そうなっ てしまったら、どうするつもりだったのか? 「いやぁ…シンデレラの気分で12時までは待とうかなと」 「魔界転生」の天草四郎役 沢田研二なら、その台詞は見事にハマっていただろう。 しかし、私の目の前の男は、30代半ばで菓子パンを食い続け、ブリッジが必要なくらい、歯を 傷め、治療中の、物腰の柔らか過ぎる男だった。 話は多岐にわたった。 外は雨が降っていた。 私たちが別れたのは11時前だった。 頼みもしないのに、彼からもらった土産はジンジャエールにチョコレートスパークリング。何 冊かの、そしてワンセット10数冊の漫画。 だが、何よりもの土産は、彼自身が、ここ埼玉のプーリアまでクルマで来れたこと、今では自 転車にも乗れる程、回復しているという近況報告だった。 明くる日、つまり今日、真ん中の娘と下の息子が、チョコレート・スパークリングを絶賛して いた。 ところで、彼は何度か口にしていた。 「スーサイドマンはやめて、マジィドロップスに改め…」 いや、マジィではダンサーになってしまう。 マーシーでは、もっとまずいことになるだろう。 マディ… 彼の自称が、私のアタマの中に定着するには、まだしばらく時間がかかりそうだ。 ここ埼玉のモントルーは、あのフレディが息を引き取った町には劣るが、それでも住みづらく はない。 こんな愚にもつかぬ駄文をひねくり回したおかげで、今夜はハメット短篇集はお預けになっ た。 だが、床につく前、骨っぽさを貫いた色男のハメットに安物の焼酎で乾杯。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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