コンサート終了しました(本番編)
あんさんぶるおとまつ第4回コンサートのご報告のつづき、いよいよ、コンサート本番の開幕である。特に大きな問題もなく、ステージリハーサルは終了。午後2時半ちょうどに開場するとすぐに、数名のお客さんがお見えになった。よかった、これでお客さんゼロは免れた・・・(爆)でも、ほんとそれくらい心配していたのだ。一応、ホールのキャパは最大で110名くらい入るらしいのだが、事前の手ごたえから70席くらいしか並べなかったんだけど、それでも多すぎるかなって思ったくらい。で、ふしぎなことに内部の忙しいはずの方々が何人かお見えになった。拠点のローテーションとかを調整してくださったんだろうなぁ。有り難いことである。で、皆さん口々に地図がわかりにくくて迷ったって・・・そう思ったから曲がるポイントの写真を入れたのに、写真の方を信用してくださいよぉ・・と言って見たところで仕方ない。そういう迷えるお客さんのことを考えて、本番スタートを5分遅らせた。最終的には、用意した座席の6割程度入った感じだろうか、これくらい入ると、ステージからはわりと埋まって見えるので、何とか他の出演者の方々への面目は保てたかもしれない。そして、コンサートの開幕。ロシア歌曲が思いのほか良い雰囲気で、まさにツカミはOK!後で、クラリネットの稲垣先生からも「おまえさんの書いた楽譜は売れる」と評価していただいた。私にとって、ピアニストとしては20ウン年ぶりの舞台だったが、大成功と呼べる、再デビューになったのではないかと思う。グリンカは残念ながら舞台袖で、扉越しでの鑑賞となったが、これもなかなかえもいわれぬ切なげな雰囲気がよく出ていて、終盤にむかっての盛り上がりも効果的で、なかなかの秀演。チェロの宮澤さんがまた良くてねぇ・・・本来の指定楽器であるファゴットの演奏家が聞いたら、ちょっと穏やかな気持ちではいられないんじゃないかなぁ?チェリストが俺の仕事を取るな!・・・みたいな。そして15分の休憩の間に、ピアノニストモードになっていたコンディションを、一気にヴァイオリニストモードに変換する。具体的には、ロングトーンの遅いボウイングと、短い音の早い運弓を練習して、チャイコの演奏に必要ないくつかの音階の運指を確認した。第二部の演奏に先立って、曲目解説のために舞台にたつと、日頃から私がお世話になっている方々の姿が目に入る。驚いたことに、私の勤め先の大学の学長の姿がお客さんの中に発見。たしか今日は出張の予定が入っていたはず・・・その合間のスケジュールをこじ開けてきてくださったらしい。私のヴァイオリンの師匠も、地元が忙しいはずなのに、ご夫婦で足を運んでくださっていた、。そんな、難しい状況の中を来て下さったであろう方々の姿を見ていると、自然と、感謝の念が湧き起こってくる。そんな中で始まった、チャイコフスキーの「偉大な芸術家の思い出に」の演奏は、私にとっては、まさに夢のような時間であった。第1楽章冒頭、ピアノの分散和音で始まるってチェロの第1主題が現れるまで、わずか一小節弱しかないのだが、宮澤さん悠然と構えて、ぎりぎりまで弾き始める気配がない。もう、出るタイミングが過ぎちゃうよぉ・・・と思った矢先、やおら弓を小さく振りかぶったと思うと、ガツーン!衝撃的な第1主題が始まった。まったくこの人は、なんという劇的な始め方をしてくれちゃうのよ。これを受けて立つ私のヴァイオリンの旋律は、思わず力が入りすぎて、音程は上ずるわ音は裏返りかけるわ・・・だがそんなこと気にしていられない。ピアニストとチェリストが最高の気迫で望んでくれているのだ。私が、一瞬でも気迫を緩めればすべてぶち壊しにしてしまう。どんな事故が起きようとも、ファイティングポーズだけはとり続ける。そんな気持ちで、楽器と楽譜と格闘しつづけた約50分だった。でも、苦しみながらも不思議と楽しくてしょうがないのだ。惜しかったのは、第2楽章最終変奏から終結部に向かうところで、下降形のアルペジォを繰り返しながら盛り上げていくところで、思いっきり音程を外してしまった。アルペジョの1発目で、一瞬「あっ」と思ったら、もう立て直すことができなかった。ここだけは、自分的に「大事故」って感じになっちゃったなぁ。でも終演後には、少な目のお客さんにもかかわらず、盛大な拍手をおくって下さって、「ブラボー」の声もちらほら。心から喜んでくださったように見えるお客さんの表情を見て、この本番を最後までやり抜いて本当によかったと実感。そして、共演の方々、中でもピアノの田中さんに演奏をお願いできたことは、正直、懐具合のことを考えると本当に痛かったけど、「おつりが来る」どころではない素晴らしい演奏をしていただき、感謝の気持ちでいっぱいである。打上げも盛り上がって・・・帰宅するまでは本当に幸せ一杯だった。そう、夜のニュースに接するまでは・・・これで本当にいいのか日本。いや、実のところ私だってある程度は、こういう事態が起きても仕方ない、とは思っていたのだが、結果が極端すぎるのが日本人の悪い癖だ。そうそう、途中でニュースを見るのがいやになっちゃって、本番の録画をプレイバックしてみたんだけど、思ったよりは私の起こしたこまかな事故が気にならず。心配した私の音量は、十分すぎるほどで・・・というよりもちょっと音がでかすぎたかも?客席の後方で録画&録音したビデオ。思っていた以上に楽器の音はしっかり飛んでいたらしい。もっと、自分の楽器の力を信じて身を任せたほうが良かったと、少し反省したところである。