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テーマ:DVD映画鑑賞(14211)
カテゴリ:ちょっとひとり言
さて退院してきて、以前からいつかは観たい、観なきゃいけないと思っていたDVDを買った。
第2次世界大戦終結直前の狂気の日々を描いた映画、ヒトラー~最期の12日間、原題“Der Untergang(破滅)”。 ドイツ人と日本人の戦争を知らない世代がソファで一緒に、第2次世界大戦の終戦直前の状況を描いた映画を観ているって、なんだか変な気分。 ヒトラーの防具の中で、言葉でつづられている地獄絵のようなベルリンの様子、首相官邸地下の防空壕や指令本部の様子が、今度は映像となって迫ってくる。 この映画が製作されていた頃、ドイツ国内ではその是非をめぐって議論が交わされていた。 ヒトラーという人物を、史上最悪のモンスターとしてではなく、その人間性や苦悩を描くことによって観る者に親近感を与えてしまうのではないか、ナチスドイツの歴史を肯定してしまうことにはならないか、と懸念されたからだ。 この映画の中では、追い詰められたヒトラーが狂気に駆られて破滅の道を進んでいく様が描かれている。 いよいよソ連軍がベルリンに迫って来ると、官庁に退去命令が下される。 軍司令部や側近である上級幹部を残して、ナチス幹部達がベルリンから脱出していく。 前線で戦っている兵士達を見捨て、ベルリンを脱出することもできずにいる住民達を見捨てて。 脱出しようとする幹部と、ベルリンに残る幹部の間で交わされる言葉 戦っているドイツ軍兵士達はどうなる? ベルリン市民は? まずは市民を避難させなければ ドイツ国民は自らこの運命を選択したんだ 残された幹部達も、状況が悪くなるに従って一人また一人去って行き、最後まで残ったのは、ほとんどがヒトラーの言いなりになるだけの忠実な側近や下級兵士ばかり。 いや、逃げて行く者も、残る者も、全員がベルリンは持ちこたえられない、敗戦の時が迫っていることを十分すぎるくらいに分かっている。 地上ではベルリン市民が連日にわたる空襲の砲火に逃げ惑い、少年少女までもがろくに武器も与えられずに国防軍の真似事をさせられている。 その同じベルリン中心部にある首相官邸の地下壕では、長年ヒトラーの愛人として寄り添ってきたエーファ・ブラウンが、シャンパンを飲み、タバコをふかし、ダンスパーティを開催している。 まるで現実から目を背けるように、面白おかしく暮らしている。 どんなに惨状が伝えられても、もはやそれを把握し判断することができず、司令本部の机上で戦況を挽回するための作戦を指示するヒトラー。 側近達がベルリン脱出やドイツ軍の退却、降伏を進言しても、頑なに拒み続ける独裁者。 敗者にはなりたくない。自ら負けを認めることだけはできない。 この戦争に勝てないのならば、ドイツ国民など滅亡するしかないのだ すさまじい狂気。 いよいよソ連軍が迫り、もはやベルリンがおちるのも時間の問題となった時、ヒトラーは結婚したばかりの妻、エーファを伴って自害する。 ソ連軍に発見されたくないので、自害したらすぐに焼却するようにとの命令を下して。 ドイツを破滅の危機に追い込んでおいて、結局は、自分のことしか頭にない総統。 ソ連軍がすぐそこまで迫っている時、ヒトラーのそばに最後まで残った側近ゲッペルスの妻が、6人の幼い子供達を連れて、首相官邸の地下壕にやって来る。 一番大きな子は女の子で8歳くらいだろうか。一番小さな子は2歳か3歳くらい。 彼女もまた忠実なヒトラー信望者。 常に背筋を伸ばしてキビキビと動き回り、強い信念とプライドの高さを感じさせる。 無邪気で愛らしい子供達を統率して歌を歌わせ、度重なる空襲で揺さぶられ続けている地下壕に朗らかな雰囲気をもたらす。 幼い子供達を連れて脱出し、どうにかして生き延びる努力をするよりも、戦争の最前線にとどまることを選ぶ親。 信望する総統が今まさに自害しようと自室に篭った時、取り乱す。 私達を見捨てないで下さい とすがりつく。 睡眠薬を飲ませて眠っている6人の幼い子供達ひとりひとりの口に、母親が自ら自害用の毒の入ったカプセルを噛ませて死なせていく様子が丁寧に描かれている。 全般にわたって淡々と、誇張することなく描くことで、映像が真実味を増し、狂気を浮き彫りにしていると感じた。 モンスターではなくただの人間であったヒトラーという人物への思い入れもなければ、破滅が待っていると分かりながらも最後までヒトラーのそばを離れなかった側近達の美学も、滅びの美学もない。 そこにあるのは狂気。 狂気に翻弄される悲惨さ。 出演している俳優達がすばらしい。 ドイツで実力派として知られている俳優達を総動員したという感じ。 ヒトラーを演じた名優ブルーノ・ガンツのしゃべり方、特にキレて腕を振り回しながら話す姿は、古い映像で知っているヒトラーにそっくりで、鬼気迫るものがある。 ヒトラー~最期の12日間 Der Untergang お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
October 30, 2009 05:36:58 PM
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