南ドイツ　小さな谷の旋律

S村のプローベ

そろそろクリスマスのミサで歌う曲を決める時期だ。

今年もどうせ、ここのところ毎年歌っている英語のクリスマス・ソングでごまかすつもりだろうと、オットとも話をしていた。

曲自体は歌いやすいし、クリスマスらしい悪くは無いのだけど、ここ数年殆ど変わらないレパートリーなので、さすがに飽き飽きしていた。


S村に向かう車の中で、指揮者に聞かれた。

クリスマスのミサで何歌いたい？

それ、私に聞くの？？

（もちろん）ミサ曲！（って、いつも言ってるんじゃん）

FilkeとかCasaliのミサ曲、今年は夏のPatroziniumで歌わなかったじゃない。

だからこのどちらかを歌ったらイイんじゃない？

あとはBrucknerのミサ曲も数年前に一度歌ったっきりだよね。


すると指揮者

うう・・・

唸ったっきり返事もしてくれなかった。

あーあ、怒らせちゃった

でもまあ仕方ないよね。


指揮者は、S村の教会コーラスにはほとんどエネルギーを使おうとしない。

この時期の彼は、K村の教会コーラスだの、男声合唱団のコンサートだの、見さでのオルガン演奏だのと色々と抱え込んでいるので、時間が無いというのも事実だし、

S村はメンバーにヤル気もないしレベルも低いから、指揮者もそれ以上のモノを要求しないし余計なエネルギーを注がないというのも事実。

今から、ミサ曲をやるとなれば、プローベを集中してやらなければならないし、オルガン演奏者が必要になるし、ゲネプロだってそれなりに時間が掛かることになる。

指揮者としての負担が倍増することは目に見えている


でもね、散々苦労した挙句一度しか歌っていないBrucknerのミサ曲ならともかく、FilkeやCasaliのミサ曲は、今年を除けば毎年毎年夏に歌ってきているのだ。

出来ないわけがなかろうが、見くびるのもエエ加減にしなさい、と、私は思う


プローベが始まり、来週のミサで歌うコーラルミサ曲を一度通したところで、指揮者が全員に投げかけた。

クリスマスのミサで、何歌う？

いつもの如く、誰も何も言わない。

すると指揮者、楽譜棚から山のようにクリスマスソングの楽譜を出してきた。

やっぱりね。

と、少しの間楽譜の山をかき回していた指揮者が、向き直ってもう一度投げかけた。


クリスマスソングを歌うか、それともミサ曲を歌う？

おおおおお

即座にミサ曲と答える私。

誰がミサ曲に賛成？

どうせ私一人だろうな、皆に嫌われそう、と思いつつ、即座に手を上げた。

すると私の隣で、いつも「この曲は難しい」だの「高すぎる」だのと文句ばかり言うドリスも手を上げている

アルトでも一人、、、最終的には二人が手を上げた。

指揮者が数えて　５人か

オットも後ろで手を上げていたらしい。そりゃそうか。

それじゃ、クリスマスソングに賛成の人は？

意外や意外、誰も手を上げなかった。

これには指揮者も驚いていた。


というわけで、めでたく今年のクリスマスのミサは、Filkeのミサ曲に決定した

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