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カテゴリ:ナースと呼ばないで
整形外科の診療所はお年寄りが多いので 「次は2週間後に来てください」 なんて先生や看護師さんが言っても 「えーっと 何て言ってたっけかなぁ」 バッチャンたちはすぐに忘れる。 なので うちの診療所は診察券の裏に 特殊なシールが貼ってあり 次の来院予定日が記入できるようになっている。 『次回の診察予定は〇月〇です』 もちろん目安なので天候や身体の調子で 多少日程がずれたってかまわないのだが 「すぐ忘れちゃうから助かるわぁ」 このシステムはなかなかの評判である。 あるとき 「もっと大きく太い字で書いてくれない?! 私は目が悪いから全然見えないのよ!」 と強い口調で訴える患者さんがいた。 高齢者と呼ばれる年代ではあったので 老眼という意味かと思ったのだが その患者さん(仮名:Aさん)が言うには 視覚障害があるということで 薬の処方や会計の際にも より丁寧な説明をするよう要求した。 Aさんのカルテには 視覚障害があるとの注意書きが入り 次回来院日シールは特別仕様になり 金銭のやりとりでは 硬貨の種類の見分けがつかないと言うので ひとつひとつ丁寧に確認するなど 対応する際には特別に時間をかけていた。 ある日 そのAさんが ご近所のおトモダチが怪我をして ここに来ているハズなんだけど と診療所に駆け込んできた。 そういえば その少し前に 転倒して足を痛めたという患者さんがいた。 個人情報保護の関係で そういう患者さんが来たかどうかは 受付で答えることはできないのだが Aさんは そんなコトはおかまいなく 勝手知ったる行きつけの診療所とばかり 待合室の方に向かって首を伸ばした。 そして Aさんは 大勢の患者さんが待合室にいる中 1番奥のベンチに座っている その患者さんを見つけると慌てて駈け寄った。 えっ? あれ? 確かAさんって視覚障害で 遠くもよく見えないって言ってたよな 服装や雰囲気だけで見分けたのか それとも ひょっとして・・・ 治療が終了し会計をするために おトモダチが待合室のソファに腰をかけ バッグから財布を取り出すと 「私が代わりに会計してきてあげる!」 Aさんは嬉々としてカウンターにやってきた。 おトモダチの手助けをしてあげられることが 嬉しくて仕方がないようだ。 「それでは診察券をお返ししますね」 とAさんに差し出すと これまた勝手知ったるシステムを おトモダチに教えてあげようと 慣れた手つきで診察券をクルリと裏返した。 「え~っと次の予定はねぇ 〇月〇日って書いてあるわ♪」 その文字 いつもあなたが 全然見えないって言うサイズなんですが 誰かに特別扱いして構って欲しかったのかなぁ。 だったとしても視覚障害者を装うのは反則だと思う。 ←武士の情けで気づかぬフリしてあげた お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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