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2009年11月25日
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角田光代の「しあわせのねだん」という本を読んだ。


エッセイというと、作者の生活が見えるものだが、さらにお金に関するエッセイとなると人柄もより見えてくる。

今まで、この作家さんの本を読んで、読みやすいけども、なんだかイマイチ自分の中に入ってくるものがないと思っていたことが解決した。

断言すると、この作家さんと私は考え方がまったく合わないのだわからん

このエッセイは、角田氏が使ったお金に関するお話である。
いつもの如くサラッと読んだのだけど、全体的にすべてにおいて突っ込みや反論がしたくなるのである。

そして読んだ最終感想が、
「この人のお母さんは、可哀想だ!」
だった涙ぽろり

読書サイトの、みんなの感想の中に「親子旅行の話がほんわかした」とか、「親子旅行の話が良かった」とか書いてある。
私とはまったく、真逆の感想だと思う。
なので、角田氏のファンで、「親子温泉旅行の話」がいい話だったと思う人はここから先は読まないことをお勧めする。

まず、この親子温泉のお話「記憶9800×2」の内容をご紹介。

角田氏は、自分は稼げる作家で忙しいと主張している。
毎年、母親の誕生日に温泉旅行をプレゼントしている。
しかしながら、とっても忙しい角田氏は年に1回誕生日しか、親のために時間を割けない。
だから、近場の1泊温泉旅行になる。

母は、旅行に無力・無意志である。
なので、角田氏が独断で宿は決めることになる。

とっても忙しいから、情報収集や丹念な下調べが出来ない。
したがって、インターネットで1泊9800円の豪華マツタケコースを予約した。

結果は、何一つ良いところなしの大失敗。
ボロ宿で温泉も不潔な感じが漂い、料理もマツタケコースなのに土瓶蒸しとご飯のみにマツタケが少し使われてるだけで、味もしない…。

角田氏も内心失敗だと思っているが、母親が愚痴を言うと腹を立てる。
でも、仲居さんに、
「お母さん、毎年誕生日に温泉に連れてきてもらうって嬉しそうにおっしゃっていましたよ。親孝行なんですね。」
といわれて、機嫌を直す。

この旅行の2年後の誕生日には、お母さんは入院して温泉には行けず、その後9日で他界されている。
そして、この史上最低な旅が最も心に残る、良い思い出となったらしい。

で、さらに角田氏は言うのだ「親と子の役割交換できたから、幸せだ」と。

どういうことかというと、
子供は無意志・無力で旅行の際は、親が引率して出かける。
そして、文句は言いたい放題に言う。

親が老いて、無意志・無力になり、今度は子供が親を引率する。
親は、文句は言う。

親と子の立場が、逆転する。

子供の頃、親にわがままを言うと叱られた。
だから、子供である角田氏も「わがままを言う親に、存分にぶち切れていい」と言い切る…。

どうでしょう、親孝行ないい話だと思います?
私は残念ながら、まったく思いませんでしたぷー

まず自分で、とっても忙しくて稼げてると思っているのに、親に使うお金が年9800円。

角田氏はこの本のあとがきで、22歳で一人暮らしをする際、母親から「もし食べるにも事欠く状態になったら使え」と、家族カードを渡され、1ヶ月で40万以上の浪費をして、心底母親を嘆かせている。
自分は、わけの分からんことに(その理由がふるってる、親がお金がないといったことがなかった、だから家にないにしても、銀行には使っても使っても湧いて出るお金があると思って、40万の浪費をしたと…。生活レベルで普通自分の家が上流・中流・下流のどの位置ぐらいかわかるだろう?億ションに住んで、家政婦がいて、毎日豪華な食卓だったのか?)お金をかけてもらっているにもかかわらず…。
旅行で、しかも豪華マツタケコース9800円ですよ?
どう考えても、豪華なマツタケが9800円のわけないでしょう?

さらに、親の誕生日に口コミ情報も確認する手間を省く上、自分が好きなお肉ではなく、母親の好きなマツタケコースに譲ったことを親孝行だと思い込んでいる。

母親に料理や宿に対する不満を言われた、角田氏は、
「文句があるなら、自分で予約したらいいじゃない。」

とか、
「お肉がいいところを、マツタケに譲ってやったのに。」

とか、挙句の果てには、
「安かろうがボロかろうが、ここの支払いは私なんだから御礼ぐらい言えばいいのに。」
と、ブチギレて思ったりするのだ。

売れっ子作家で、自分はたいそう接待してもらっているみたいなのに(エッセイでそう言っていた)、接待する側の姿勢を学んでいないにもほどがある、と私は思う。

誕生日のお祝いならば、誕生日の母親が喜んでくれるものをプレゼントすべきでしょう。
普通に考えて、母親が旅行に対して無意志・無力な反応しか返さないのは、今までのプレゼントしてきた旅行が楽しくなかったからだ。
楽しんだ良い思い出があれば、
「どこ行きたい?」
と、娘に聞かれて、
「どこでも」「なんでも」
とか、まず答えないと思いませんか?
楽しかった思い出があれば、また旅行に連れてってもらえるとワクワクしたりするでしょう?

このお母さんの身になって考えてみたら、
「娘は忙しい、誕生日ぐらいしか会えない。」
「温泉をプレゼントしてくれる、その気持ちはうれしい。」
「さほど、気乗りする旅行でもないけど、娘には会いたいし、せっかく言ってくれてるんだし、行こう。」
だよ!!

加えて、数年後には他界されているということを考えれば、体力も低下していたかもしれないし、近場の1泊の温泉でも疲れる状態で乗り気にはなれなかったとも、考えられる。
さらに言うと温泉旅行に、いつも無意志・無力状態の母親なのでしょう?
「だったら、温泉以外のプレゼントを、会話の中から探り出すぐらいの気遣いはないのか。」とか言いたくなるのです。

絶対、角田氏は温泉旅行に連れて行く、親孝行な娘である自分に酔っている。

そして、役割の交代なのだから親に存分にブチキレて怒ってもいいのくだり…。

確かに老いると、子供に戻るといいますが、だからって親が子を叱るのと、子が親を叱るのとでは全然話が別だろう?
普通に考えて、親には親としてのプライドがあるよね?
基本的に子供にしてもらう事より、親が子供にしてきた事の方がものすごく多いはずだ。
愛情も労力もお金もかけて、一生懸命育てた子供に、自分が老いた時、子供を叱るように叱られたですか?
私は、嫌ですが。

「私は親孝行な娘です」
「母が私にしてくれた事を、私も母に出来たから幸せ(いや、出来てないよね?)」
という、自己陶酔が痛すぎると思うのは私だけでしょうか?!

温かみのあるピンクの表紙、そして、「しあわせのねだん」というタイトル。
手に取ったときは、読後はきっと優しい気持ちになれると、信じて疑わなかったのだけど。

あまりに期待したものと違った為、珍しく辛口な感想をアップしちゃったわほえー





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最終更新日  2009年11月25日 18時50分09秒
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