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なかなか、重い内容の作品でした。 シリーズのファンとしては、重い内容でも嬉々として読んだけど。
ようするに、劉輝と深く関わる人たちと秀麗の「最期」を描いた物語でした。 彩雲国の裏歴史を描いた物語なので、本編最終巻でスッキリしなかったこともわかるので、個人的にはとっても、ありがたい本とも言えます。 まあ、本編で、書けなかった大人の物語でした。 さらには、劉輝の「喪失とその後」の物語とも言えるかも。 悠舜・旺季・秀麗を失う前後の劉輝の物語ね。 短編なので、それぞれ単独でも読めますが、時系列で並んでいるので、最初から読み進めた方がわかりやすいと思います。 ・雪の骨―悠舜― 思ってたより早い悠舜の「最期」に、ちょっと悲しくなりました。 本編の最終巻を読んだ時は、「悠舜は長生きしたかも?」という希望的観測が持てる終わり方だったので。 やはり本編の「仮病」も嘘だったなぁ、と。 まあ、本編でまったく語られることのなかった悠舜の人生の全容が理解できたのがうれしい。 あとは、凜さんへの激しい想いの描写もありで、個人的に楽しかったです。 帰朝して、凜さんと一緒にたまたま仕事してる楊修に嫉妬したり、三行半に屁理屈をこねていたりする悠舜がツボです。 そして、残念ながら二人の子供の性別と名前は不明のままでした。 悠舜が先代「鳳麟」(悠舜の曾祖母)から告げられたのは「片翼の鳥」という運命で、すべての喪失と、それを引き替えにした出会いがあるということ。 旺季との出会いが悠舜を救う。 でも、旺季では悠舜の願いを叶えられないと分かったときの絶望。 悠舜の本当の主君が劉輝だったのは、劉輝のもつ裏の薄闇を悠舜が共有できたからだった。 劉輝は無自覚だけれど、悠舜は理解していたんですね。 主君から死ぬまで一緒にいて欲しいと懇願されるほどに、信頼された悠舜。 つねに献身して策を与え続けても主君にも最終的に、猜疑され、殺されたり傷つけられてきた姫家の一族最期の一人悠舜。 ここまで信頼されたということは、悠舜にとって本当の幸福だったことでしょう。 まったくもって、人生に執着を持たなかった悠舜が、本当に死ぬ間際で「もう少し生きていたかった」と思うようになるのもその表れ。 妻子と薄闇をもつ主君を残してこの世を去るのは、いくら死にたがりの悠舜でも、さすがに心残りだったようですしね。 まあ、色々と壮絶な人生でしたが、最期は満足の人生を送れたのかな?という気がします。 ・霜の躯―旺季― 旺季の物語は、まさしく彼の人生そのものでした。 正直、貧乏くじを引き続ける旺季が、個人的には一番好きですが。 最終的に感情に流されて、詰めが甘いのも人間らしくていいよね。 璃桜が公子になったことで、悠舜が作った「鄭君十条」の最後の項目に該当したため、政治の表舞台から遠ざかるを得なかった旺季。 悠舜の死後8年目にして振り返る、彼の人生。 そして、最後の戦い。 秀麗と山野のお婆さんを助けるために、死を覚悟しての最後の戦いは文句なしにかっこいいです。 秀麗を助ける際に、旧来の方法しか使えなかった旺季。 それしか助けられないこともわかっていたから、秀麗は否定したくともできない。 それにしても、「官吏殺し」の異名は、清雅ではなくて秀麗につけられているとは、清雅は、一体何をしているのだ!今回まったく登場せせず…出世したかも不明で残念。 旺季が亡くなり、この陰謀に国試派が多く荷担していたことが判明。 その結果、葵皇毅が景柚梨と並んで宰相位につくという展開は意外でしたが。 劉輝の薄闇の部分も、すべて旺季にはお見通し。 旺家一族の生き様や、荀馨将軍との関係やら、悠舜介抱の話やら、紫装束を売り払った悠舜国試受験の話やら、経済面も含めて旺季がどんだけお人好しで、苦労性なのかもよく分かりました。 なんだか、裏歴史は旺季が陰の主役と言っても過言ではないと思いました。 ・北風の仮面―晏樹― 山野の変の1月に晏樹は朝廷を去り、陰謀に関しても何もせず(真っ先に何か画策しそうなのに!)、旺季のためにずっと看病し続けたのは、健気だったと思います。 彼の人間性がどうあれ。 なんにせよ、彼は自分のために楽しく、そして旺季のために戦い続けたという人生でした。 最後が消えるようにいなくなるのも、晏樹らしくてよいなと。 ・氷の心臓―劉輝― 秀麗とのたった1年にも満たない結婚生活ですが、秀麗が劉輝と幸せそうな日々を送っていたのが読めて良かったなあと思います。 それにしても、まさか劉輝の幼少期のトラウマがここまで引っ張られるとは、思いもよりませんでした。 劉輝にとって、本当に大切な3人(悠舜・旺季・秀麗)の死を乗り越えて、やっと悠舜の遺言通り、「おそれずに前へ」進むことができるようになったのを感じさせてのラストに一安心。 それにしても、第六妾妃(劉輝の母)と山野のお婆さんがこんな形でつながるとは!という意外性も、中々よかったかなと。 もう少し、番外編を書いてくれると、ファンとしてはうれしいのだけども。 これで終わるのも、いいなと思ったりもする。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012年12月11日 17時02分35秒
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