テーマ:詩&物語の或る風景(1049)
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「何をするつもりなの?!」 その声は突然後ろから聞こえて、振り向いた。 さっきまで誰も居なかったはずの砂浜には、 背が大きくて、少し色黒で、20代に見えたけど 少し大人になりきれていない少年がそこには居た。 瞳は綺麗だったけど、その目は私を責め立てるような険しい目だった。 たぶん、何をしようと思っているか解ったと思う。 もう一度聞かれた。 「何をするつもりなの?」 単に海と戯れて居ただけって答えるつもりが 「消えたかった・・・」 って答えてしまった 面倒な事になってしまった。 とっさに、逃げる為に 「でもいいの。もうやめたから・・・」 少年は、全てを見透かしたように、疑いの目をしていた。 「・・・・・わかったわ!ねぇ少し一緒に遊ばない?君はなんて言う名前なの?」 「僕の名前は水玉って言うんだ。変わった名前でしょ?おねぇちゃんは?」 少し本名を言うのを躊躇っていたけど、何も答えないわけにもいかないので 「私は・・・みなみ!みなみって言うの。」 その場で思いついた名前を言ってみた。 「行こう!」 そう言って水玉は手をグイグイ引っ張って、色んな所を案内してくれた。 見晴らしの良い山 海の色が変わる海岸 南国のフルーツジュースを片手にのんびりと、歩いて行った。 すれ違う人々は、みんな時間が止まっているんじゃ無いかと思うぐらいゆっくりしていた。 そして気が付いたら夕方だった。 水玉と最初に会った海岸で金色の海を見ながら 「みなみちゃん・・・」 「なぁに?」 「まだ、死ぬつもり?」 水玉は少し心配そうに私の顔をのぞき込んだ。 私は少し時間をおいて、静かに首を横に振った。 その頃には私の心もこの風景に洗われて、そんな気も起こらなくなっていた。 何よりも、水玉の引っ張ってくれる手がすごく暖かかった。 「今日はホント楽しかった。ありがとう。」 水玉はいつのまに拾ったのか、大きな貝殻をくれた。 「何か嫌なことがあったら、この貝殻を耳に当てるといいよ。そして僕を思い出して。」 そう言うと水玉は私の手にキスをくれた。 水玉の顔を見ると今にも火が出んばかりに真っ赤になっていた。 そして水玉は何処かに走って行った。 私は東京に帰ることにした。 今日あったことを、記憶しておくために、小説にして置いておこう。 そうだ、ペンネームは、ここの青空が透通るぐらい綺麗だったから 「青空みなみ」でいこう。 売れるかどうかは、分からないけど・・・ その数カ月後何故か分からないが、私は新人賞を貰っていた。 少年の少し甘酸っぱい物語「ミナミの水玉」で・・・ ー終ー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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