おれっちの過去・・・
おれっちでやんす。いつか、この話をしなければ・・・そう思っていたでやんす。今日はその話をするでやんす。以前にも話したと思うでやんすが、おれっちは「保健所」というところにいたことがあるんでやんす。おれっちが前にいた家族は、おれっちを捨てた・・・事情があったんでやんす。おれっちが住んでいた家を出て行き、ほかの家に引っ越すことになったんでやんす。そのときのパパ、ママはいっぱい、いっぱい喧嘩をしていたでやんす。おれっちにもかまわなくなっていたでやんす。ママはどこかへ電話してはおれっちをもらってくれないかって言っていたでやんすから、もうそのときからわかっていたでやんす。おれっちはもうここにはいられないんだなって・・・結局おれっちは、誰かの家に行くのではなく、あそこに連れられていかれたんでやんす。おれっちはママに抱かれ、そこにきたんでやんす。ママはおれっちを知らない人に渡すと、おれっちの頭を何度も触ってくれて、そして大粒の涙を流していたでやんす。おれっちは吠えることも、泣くこともなく、ただ知らない人に抱かれていたでやんす。今考えても、あのときどうして泣かなかったのかおれっちにはわからない。別れることを理解できなかったのか、それとも裏切られたことを受け入れることができなかったのか・・・それとも、もうどうでもいいと思ったのか・・・おれっちは、そのまま窓のない部屋に連れて行かれたでやんす。そこにはたくさんの犬達がいたでやんす。そしておれっちの耳には彼らの悲しい声だけが聞こえてきたでやんす。「どうして?どうして僕はここから出られないの?どうしてママは僕を迎えに来ないの?」「ママ~ママ~会いたいよ~もう、もう二度と悪いことしないから、会いに来て・・・」なかには、人間を見るなり、大きな声で吠えてみたり、ずっとぐるぐる回っている犬もいたでやんす。そして、ほかの犬とは違って、ずっと黙っている犬がいたんでやんす。おれっちはその犬の隣に入れられたでやんす。鉄格子で隣と隣が分けられているだけでやんしたから、隣の犬の顔も声も聞こえてくるでやんす。「こ、こんにちは・・・でやんす」「・・・」「あ、あの~ここは?」「・・・」「ははは、話したくない?そ、そうでやんすよね、いきなり話しかけてごめんでやんした」「・・・おまえはなぜここへ来たのだ?」その犬がおれっちにしゃべりかけてくれたんでやんす。「お、おれっちは、たぶん、捨てられたでやんす。だからここへ・・・」「捨てられた・・・なにか悪いことでもしたのか?」「そ、そんなことおれっちはしてないでやんす、事情とかいうやつでやんす」「事情か・・・人間は勝手だからな」「そ、そうなんでやんすか?」「あぁ、俺と一緒にいてくれた人も・・・」その犬は途中で話をやめてしまったんでやんす。「ど、どうしたんでやんすか?」「いや、なんでもない・・・おまえ、ほかの犬達と違って、どうして吠えたり怖がったりしない?」「ど、どうしてでやんすかね?自分でもよくわからないでやんす」「ははは、おまえ面白いやつだな」「あ、あなただって、ほかの犬とは違って吠えたりしていないでやんす」「俺か、俺は・・・」そのとき、おれっちたちの部屋の扉が開いて、人間がご飯を持ってきてくれたんでやんす。「うわぁぁ!ご飯出るでやんすか!?ムシャムシャ・・う、うまぁぁぁい!」「ははは、ほんと、面白い奴だ・・・・・・おまえみたいな奴は助かるかもな」「た、助かる?何からでやんすか?」「・・・やはり何も知らないか・・・」「な、なんでやんすか?」おれっちの胸になんだかとても嫌な風が通って行ったでやんす・・・この続きはまたこんど・・・またおれっちの日記読んでほしいでやんすよ!!