カテゴリ:建築
今日の朝日新聞1面に「住宅着工3割減」と出ていた。国交省によると7月の前年比が23.4% 8月が43.3%減! 7、8月の2ヶ月間で前年に比べ3割減とのこと。 なぜ、こんなに減っているのか?理由は簡単 国交省の間違った施策のためである。 そしてその間違った施策を確認検査機関が輪をかけて厳格に実行したのため。 国が方針を誤り検査機関がその趣旨を理解しなければこのようなことが起こるのだ。 国交省の今回の責任者小川審議官は、ようやく異常事態に気付き各検査機関に対して「審査が滞ることのないようにして欲しい。」というコメントを出したが、こんなあいまいなコメントでいったいどうしろというのだろうか? この異常事態の収拾は当分つきそうにない。 ■硬直した異常な仕組み 今月1日に横浜市に行き確認申請の事前相談をした。 相談の結果、6/20の改正前には可能だった設計ができなくなった。今回の改正の趣旨は不正を無くすことであり、以前できたことができなくなることはないはずなのに。更に驚くことに、6/20に制度が改正されてから10/1までの間、適合性判定をPASSした物件が1件もないとのこと。住宅は3割減とのことであるが、マンションや病院などのある一定規模以上の建築の着工がまったく無いのである。横浜市は特定行政庁として日本1大きい単位である。その横浜で「ゼロ」とは、全国でもかなりの影響が出ているのではないだろうか? 3ヶ月過ぎても1件も無いとは、確認申請を通すことがまるで特許でもとることのように難しいのである。特許でさえ「拒絶」と「補正」があるのに、それすらできないシステムなんて、こんなばかげた話があるものか? 安全のために規制を設けるのは良いことではあるが、「設計者を信頼せず書類のあら探しに終始するような硬直的なシステムになっているのは問題だ。(和田章 東京工業大教授)」 ■結局は国民が損害をこうむる 建築設計とは、「構造」「環境」「動線」「デザイン」「町並み」「コスト」「工法」「法律」等いろいろな分野を統合し「建築主が満足するひとつの建物」にまとめることである。そういった統合するという建築設計を、専門家の寄せ集めで作り上げたシステムが規制をすることに無理があるのではないだろうか? 今回の改正は、国交省の役人をはじめ、法律関係の大学教授等多くの専門家がかかわっていたが「各専門家が建築設計のことを知ら無過ぎ」。多分彼らの住んでいる住宅も住宅メーカーの住宅であったり、分譲マンションだったりするのであろう。建築設計を建築家に頼んだことのある専門家が居たのであろうか? 今回の国交省主導の改正は、インスタント食品しか食べたことの無い人間がレシピを作りコックに指示を出しているようなものである 「その料理は、腹は壊さないが、まずい、遅い、高い」 それを食べなければいけないのは建築主であり国民なのである。 (この場合のコックのやるせない気持ちが今の建築設計者の気持ちと言うと一般のひとにも解ってもらえるだろうか?) ■3次災害が心配 小川審議官がこれからスムーズにする、といってもこの3ヶ月滞っていたものが急に流れ出す際の混乱をイメージしないと3次災害が起き大変なことになる。ちなみに姉歯による耐震偽装が一次災害で、今回の小川審議官の制度改悪が二次災害である。 住宅だけで、7,8月の2ヶ月で約3万6千戸も減っていると言うことは、2千万円/戸とすると7200億円。これに9月分と住宅以外の一般住宅まで入れると 3ヶ月で1兆円を超える減? 8月時点で申請の遅れを建築の業界団体から指摘された国交省小川審議官の対応は「設計者や検査機関の理解不足のため遅れが出ているがいずれ回復する」と、まるで設計者の怠慢のような言い方、しかもちょっと半笑いで楽観的な展望を示していた。こんな国交省役人のため、設計者は無駄な苦労をさせられ、国全体でこの3ヶ月だけで1兆円を超える経済活動を停滞させたのである。 10月2日に日本建築士事務所協会から国土交通大臣に要望が出された。建築の安全、建築主の財産確保、地球温暖化への配慮、建物の使いやすさ、設計効率の向上、芸術性等に配慮され、多くの分野を「統合」する建築設計の実務者の提案になっていた。 今回の中央官庁によるミスリードと、それに追随し過度な対応を求める地方の行政や検査機関の構図は、日本の行政の大失策として記憶にとどめ、こんなことが二度と起きないようにしたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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