カテゴリ:建築
制度の厳格化が何を招くか?
昨年の6/20の確認申請の厳格化の前からのことだが、 建築の安全、安心のために年々法律が積み重なり膨大な量となっている。 もともとの建築基準法の中身が複雑になり、更に新しい規制がが増える。 ・シックハウス ・バリアフリー ・品確法 ・PL法 等 建築は、生活や経済活動の入れ物だから、それらへの対応を余儀なくされる。 しかし、問題はその「やり方」である。 ■規制強化が招く問題点 例えば、建物の窓について考えてみる。都市部の建物の多くは、建物の中からの出火の際、隣家へ火が広がらないよう、また、隣が火災の際、燃え移ってこないように防火戸にすることが義務付けられている。その結果、選択肢として鉄等を使って高価な窓を特注するか。大臣の認定を取得した窓を使うかしか選択肢はなく。旧来の建具屋さんに窓を作ってもらうことは許されないのである。 つまり建物の窓(ドアも)は大手メーカーの既製品を使わざるを得ず。多様なデザイン性、ローコスト化などの向上が困難になってしまっている。窓に限らず、屋根材、外壁、クロスなど多くのパーツが認定品となっている。 「家を建てる部品の多くが認定品しか使えない。」 ガッチガチの制度なのである。 ■家電化する建築 パーツの組み合わせによって建物が出来る。 例えばパナホームと言う住宅メーカーの住宅は家全体が認定品であるため増築が困難である。昔のパーツが無いので増築に対応できない等、パーツの製造を打ち切った家電に近い。これは、建築という寿命の長い製造物にたいして、パーツの製造サイクルがうまく合わないことから起こる弊害だろう?しかし、家電化は住宅だけではなく建築全般に広がっている。サッシ、EV、配管、等。家電化すること自体が悪いことではないが、製造の担い手が特定化することでの問題が考えられる。 ■建築の家電化がもたらすもの 新しい規制が出来ると企業にとっては新しいビジネスのチャンスとも言えるが、そのチャンスを生かせるのは一部の力のある企業である(以下これらの企業を「大手開発系」と言う)。 が、大多数の製造業は新商品開発より熟練した技術で正直に製品を作り続ける企業である(以下これらの製造業を「中小熟練系」と言う)。 「中小熟練系」は、新たな規制が加わることで、今までの技術では対応できなくなり、受注の機会が減っていく。そして、廃業するか「大手開発系」の下請をすることになってしまう。その結果、「中小熟練系」の企業は優れた技術を持っていながら正当な対価が得られなくなってしまうのである。 一方「大手開発系」は新たな規制に対して、研究開発部門が自社の生き残りを賭け新製品の開発にしのぎを削る。これはこれで熾烈な競争ではあろう。大手建材メーカーによる大臣認定制度の偽装を見ると規制をクリアすることの困難さが現れているのではないだろうか?「大手開発系」であっても困難を伴う規制への対応に大多数の「中小熟練系」の会社が対応するのは不可能に近い。 これら規制は、各省庁の、各部局が、大手企業や有識者の意見を聞き作り上げているのだろうが、むしろ意見を聞く対象は「中小熟練系」等の最前線の方の意見であろう。また、それらをトータルに整合性をとり、各方面への影響を読むプロジェクトマネージメントの参加が是非とも必要だ。 過度な規制の強化は、正常な競争の世界が成り立たない重層下請けの構造を生み出し。結果的に消費者への費用負担と。働くものの雇用の不安定をもたらしてしまうだろう。 ■規制の強化と平行してやることがあるのでは? 建物の安全、安心は重要なことである。新たな規制をもうけるのであれば、 ・規制を行うのと同じ位精力的に大臣認定に拠らない技術の検証が必要だ。 ・今までの技術を生かす検証も並行して行うべきである。 ・中小の産業振興の観点から考えれば国が率先してやることであろう。つくばの建築研究所の研究者と産業振興のビジョンを持って進めてもらいたい。 ・建設市場の寡占化が進まないように、建築の技術という視点ではだけではなく、経済への影響とうい視点を持って規制の強化を進める必要がある。 ・産業振興、デザイン、町並み、生活の質等、各方面への影響を充分考え、規制強化で失敗しないためのプロジェクトマネージメントの視点が必要がある これらの視点が無いのであれば新たな規制はしてはいけない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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